2月26日妥当レンジ 16,100円~17,400円
今週は底堅い動きも、来週以降は波乱の可能性

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米経済指標発表が続く今週は強含み>
■今週は、ISM製造業指数(1日)、ISM非製造業指数(3日)、雇用統計(4日)といった2月の米国経済統計の発表が予定されており、堅調な経済環境が確認されれば、ドル高・円安と株高が期待できる。ただし、10日に開催されるECB理事会では追加緩和が予想されるだけに、上伸後は調整すると思われる。ユーロ圏消費者物価指数の2月速報値(29日発表)は、前年同月比▲0.2%と1月の+0.3%から大きく悪化している。
■国内経済統計は、全国消費者物価指数(1月・26日発表)はコアで前月比0.0%、商業動態統計(1月・29日発表)の小売販売額は季調済前月比▲1.1%、家計調査(1月・1日発表)の「二人以上世帯の消費支出」は実質前年同期比▲3.1%、といずれも厳しい状況にある。10-12月の法人企業統計(1日発表)では全産業売上高は前年同期比▲2.7%、経常利益(同)は▲1.7%。また、2月の財新・中国製造業PMIは48.0(市場予想48.3)は12ヵ月連続で50を下回っており、企業業績見通しに暗い影を落としており、今後もアナリストコンセンサス予想の下方トレンドが続くものと考える。

 

<コンセンサス予想EPSが全期間大きくマイナスに>
■2月26日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間において大きくマイナスとなった。前週比で予想EPSがプラスになった銘柄の比率は、来期・再来期ともに30%台前半に張り付いている。自動車、商社、重電機・重工業、化学などの業種が弱い。プラス企業群は、建設・不動産、鉄道などに限られる。現在の株価水準は割安であるが特に輸出企業には業績悪化懸念が強い。当面はマーケットの上値が重い中での選別物色が続くであろう。
■テクニカルな話であるが、インプライド・リスク・プレミアム算出において、「無リスク証券の利回り」として10年国債利回りを使用してきたが、マイナス金利となったことから、妥当レンジ算出には0.00%を今回から使用する。これは預金金利はマイナスにはならないということからである。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,100円~17,400円 (前回16,100円~17,350円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月26日)

今期予想EPS 978.80 (前週 985.50円)
来期予想EPS 1100.18 (前週 1107.39円)
再来期予想EPS 1195.12 (前週 1207.56円)
今期予想PER 16.54 (前週 16.20倍)
来期予想PER 14.71 (前週 14.42倍)
再来期予想PER 13.55 (前週 13.22倍)
来期予想PBR 1.03 (前週 1.02倍)
来期予想ROE 7.02% 前週 7.09%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.02% (前週 7.04%)

*2月26 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1割安感は強いものの、企業業績の下方リスクから上値は重いか

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.2%→44.7%→40.3%→33.3%→34.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、36.8%→42.9%→40.0%→38.8%→31.9%。

まだまだ業績下方トレンドが続く

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3コンセンサス予想EPSの減少は顕著に

 

 

図4日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)はまだ高い水準

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。