4月3日妥当レンジ 18,450円~19,900円
低水準な米雇用統計にも動揺はなく、底堅い展開だが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米雇用統計は市場予想を大きく下回ったが>
■3日に発表された3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が12.6万人増と市場予想の半分程度に留まった。製造業や建設業などが減少しており、ドル高や原油安の影響が表れている模様である。
■Thomson Reutersのデータ(市場予想)に拠れば、1-3月期の米国企業の利益は前年同期比2.8%の減益となる。原油価格の下落からエネルギー企業が64%の減益となる予想である。
■しかし、これらによってFRBによる利上げ予想時期の後ずれと、ドル安等によって、週明けのNY市場の株価は上昇した。
■本来は悪材料であるものが株式市場にとってはプラスに評価された面があるが、不安定なギリシャ情勢など懸念材料もあり、手放しに安心は出来ない。景気ウオッチャー調査(8日)、工作機械受注(9日)、貿易統計(20日)など注意深く見守る必要があろう。
<コンセンサス予想EPSは、来期・再来期が僅かにプラス>
■4月3日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週と同じく、今期ベースがマイナスとなったが、来期・再来期はプラスであった。ただし、セブン&アイHD(3382)が、本決算を迎えて対象決算期が移行したことによる寄与(今期+0.88円、来期+1.02円、再来期+0.94円)を除けば実質全期間マイナス。前週と比較してプラスになった企業数はマイナスとなった企業数を全期間で下回った。自動車、重電、機械、銀行などの16/3期予想がやや引き下げられており、企業の慎重スタンスを先取りした動きとも考えられる。
■対象決算期以降後の妥当レンジ下限も、19,500円(上限は21,100円)と若干上方にシフトしているが、新年度の会社予想が慎重であることに対する反応には注意したい。まずは2月決算銘柄の決算発表(新年度の会社計画)の動静を見守りたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,450円~19,900円 (前回 18,350円~19,750円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月3日)

今期予想EPS 924.63 (前週 924.90円)
来期予想EPS 1054.58 (前週 1054.38円)
再来期予想EPS 1157.21 (前週 1157.16円)
今期予想PER 21.02 (前週 20.85倍)
来期予想PER 18.43 (前週 18.29倍)
再来期予想PER 16.79 (前週 16.67倍)
来期予想PBR 1.42 (前週 1.41倍)
来期予想ROE 7.69% 前週 7.69%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.65% (前週 6.65%)

*4月3日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 


図1

12ヵ月フォワードの移動平均で見た場合の妥当レンジは、19,380円~20,960円。現株価は移動平均レンジ下限とほぼ一致。

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、43.2%→63.2%→51.9%→54.4%→47.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、46.6%→65.3%→54.5%→49.3%→48.1%。
企業の慎重姿勢を織り込む展開か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意] 

 図3

明確な根拠はないのだが、経験則から12ヵ月フォワードの移動平均レンジの下限と日経平均株価の連動性は高い。移動平均下限を株価が下回れば“買いシグナル”、上回れば“売りシグナル”。ここ2ヵ月間はほぼ一体的に推移。 

図4

対日経平均倍率は逆(数値が小さい方が上)に表示している点に注意。
昨年秋口から日経平均の上昇率を大きく下回って推移している。底打ちか?

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。