3月28日妥当レンジ 13,950円~16,200円
名実ともに新年度入り、年度替りで予想EPSは16%増加。

2014/04/01

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<年度末を過ぎて市場心理がやや好転>
■ウクライナならびに中国情勢は依然として不透明感が残るものの、配当・権利落ち後の日本株は堅調に推移している。米国株が堅調であることに加えて、毎年度末の特殊要因ともいえる市場の不可解なブレに対する警戒が後退したこと、が影響しているものと思われる。
■今週は、米国経済市場の発表が続く。ISM製造業景況感指数(1日)、ADP雇用統計(2日)、ISM非製造業景況感指数(3日)、米雇用統計(4日)。いずれも、寒波の影響が薄らぐことから改善が見込まれている。その発表内容によってはドル高・円安のトレンドが強まる可能性も指摘できよう。
■国内では、日銀短観発表(1日)、日銀金融政策決定会合(7~8日)が予定されている。短観では4月からの消費税率引上げの影響を視野に先行きの業況判断が悪化すると見られているが既に織込み済みの可能性が強い。
■日本株は、企業の本決算発表が本格化する4月下旬頃までは、米国株式市場と為替の影響を強く受ける展開が予想される(どちらかというとポジティブ方向に)。新年度の企業業績見通しは慎重な可能性が強いと考えられる。したがって、4月に株価が上昇した場合はその反動が5月に表れると考える。 

<対象決算期のシフトを視野に>
■3月27日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、引き続き前週比で大きな変化はない。今週はマルハニチロHD(1334)の上場廃止から224銘柄で掲載している(同社は子会社合併を行い4月2日に再上場)。
■現状の株価水準は特に割安でも割高でも無いが、名実ともに新年度入りをしたことによって、対象決算期の移行が進む。対象決算期変更でコンセンサスEPSは16.4%の増加が見込まれる。大雑把に言えば、ここから1年間で16%前後(中心値)の上昇が期待できるということである。翌年度ベースの妥当レンジは14,950円(下限)~17,450円(上限)。下限値を下回っている現水準では弱気になる必要は無いだろう。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,950円~16,200円 (前回 13,650円~15,850円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月28日)

今期予想EPS 767.79 (前週 763.47円)
来期予想EPS 893.84 (前週 893.88円)
再来期予想EPS 993.27 (前週 992.97円)
今期予想PER 19.14 (前週 18.63倍)
来期予想PER 16.44 (前週 15.91倍)
再来期予想PER 14.80 (前週 14.32倍)
来期予想PBR 1.28 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.77% 前週 7.79%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.64% (前週 6.74%)

*3月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
まだレンジ中心値(上限と下限の中間)よりはやや下の水準であるが、今期予想ベースでは魅力が低い。ただし、翌年度ベースでは14,950円~17,450円へとレンジの上方シフトが見込まれることから弱気になる必要は無い。 

 

 

図2

 予想ROEの低下傾向は続いている。期待リターンも7.26%と3月7日(7.24%、日経平均15,274円)の水準に近づく。これも上表と同様に、翌期を視野におけば7.76%前後に上昇(=割安)が見込まれるだけに弱気になる水準ではない。

 

図3 

 インプライド・リスク・プレミアム(EIRP)は中期トレンドで中位の水準。対象決算期移行に期待。 

 

 図4

 前週から作成した12ヵ月フォワードの移動平均で妥当レンジ(下限)を示した図表。 まだ、割安ゾーンにある。 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。