「AI相場」がピークを迎えるのはまだ先か?

2025/11/07

11月相場入りとなった今週の株式市場ですが、これまでのところ軟調な展開が目立っています。とりわけ、5日(水)の取引では、日経平均が一時5万円台を割り込むなど、前日比で大きく下落しました。

こうした株価下落の背景にあるのは、前晩(4日)の米国株市場で、足元の相場を牽引してきたAIや半導体関連株が下落したことが影響しています。この日のナスダック総合指数は2%安、S&P 500も1.2%安となりましたが、この流れを受けた日本株市場でも、ソフトバンクG(10%安)やレーザーテック(6.92%安)、アドバンテスト(5.95%安)、東京エレクトロン(4.08%安)などの銘柄が下落しました。

株価下落の要因をもう少し掘り下げると、米パランティア・テクノロジーズ株が発表した決算が好調だったにも関わらず、8%も下落したことや、米大手金融機関(モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス)の幹部がAI相場に対する懸念について発言したこと、そして、空売りで有名な米著名投資家が、エヌビディアやパランティア・テクノロジーズ株を大規模に空売りしていることが判明したことなどによって、あらためて株式市場の割高感が意識させられたことが売りにつながったと考えられます。

では、一部では「バブル」との指摘もあったAI相場はこのまま終焉を迎えるのでしょうか?

もちろん、現時点で「AI相場が完全に終了した」と断言することはできませんが、これまでのAIや半導体関連株の上昇は期待が先行しすぎた面があり、当面は株価の下落と反発が繰り返されやすい状況が続きそうです。また、直近の過去を振り返ると、AI相場の過熱感によって株価が下落した場面は、2025年の8月中旬から下旬にかけての時期や、2月中旬から3月上旬にかけての時期にも見られましたが、いずれも本格的な下落トレンドに転換することなく、株価調整の範囲内にとどまっています。

今回についても、関連銘柄の決算が好調であることを踏まえると、先行きの業績が不安視されているわけではなく、短期間で織り込まれた過度な期待や割高感に対する警戒から調整が入ったものと思われます。AIというテーマが否定されたわけではないため、息を吹き返す展開は十分に有り得ると思われるほか、来週11日(火)にソフトバンクG、再来週19日(水)にはエヌビディアがそれぞれ決算を発表する予定となっていますので、今後のAI相場復活のカギを握ることになりそうです。

とはいえ、「巨額の投資に見合う収益を生み出せるのか?」、「社債発行など、大規模な投資資金を調達することによる財務リスク」、「過当競争による収益性悪化」、「開発スピードの速さによる技術や製品の陳腐化のサイクルが短くならないか」、「AIインフラやサービスの過剰による安売り競争開始による利益率悪化」、「AIの進展による社会問題の発生と対応するためのコスト増」など、AIをめぐっては懸念点も少なくはなく、今回の株価下落によって、AIに対する冷静な視点が芽生えた可能性はあります。

したがって、今後は、AI関連企業が市場の高い期待に見合うだけの具体的な果実(業績や利益)を示せるかどうかが、厳しく選別される段階に入っていくことになりそうです。

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