資産運用立国のインベストメントチェーン

2025/11/03

・上場企業3800社、日本の中堅中小企業380万社、いずれも数が多すぎるといわれるが、どうなればよいのか。投資信託やその他の金融商品も山のようにある。人的資産と金融資産をどのように積み上げていけばよいのか。

・個人の人生を考えた場合、どこでどのように働いて人的資産を積み上げていくか。楽しく働きたいが、生活のためには苦しくても頑張って一定の報酬を得たいと思う。転職も当たり前の時代を迎えて、働く場で自分の力を発揮したいと思うが、実は思うようにいかないことも多い。

・できるだけ長く働きたいと思っても、健康でなければ続かない。常に学びに力を入れて、リスキングしていないと、年と共に実力は陳腐化していく。年とともに、必要とされる人材ではなくなってしまうかもしれない。人的資産の積み上げは、働いた成果の金銭的報酬だけではなく、自らの稼ぐ力を人的資本として絶えず磨いておく必要がある。

・バランスシートに載らない無形資産を、知的資産、人的能力資産として、学習・訓練し、見える化(可視化)していく必要がある。企業では、それを統合報告書で示そうとしている。企業として、わが社の価値創造メカニズムを分かり易くみせようとしている。多くの場合、バランスシートに載らない無形資産の見える化が問われている。

・では、企業価値創造とは、どのような方向を目指すのか。価値には経済的価値の側面と社会的価値の側面がある。この双方をどのように測るのか。世のため、人のために役立つことをわが社としてきちんと定義して、その価値を測れるようにしないと、抽象的なイメージだけが拡散しかねない。

・経済的価値と社会的価値の和集合をいかに増すのか。双方の積集合をいかに増やすのか。双方のトレードオフをいかに図るのか。これによって、価値創造に向けた自社のビジネスモデルは変わってくる。

・サステナビリティの追求においても、誰のため、何のためという基準の置き方が変わってくる。企業であるから、最終的には中長期の金儲けの仕組みが問われるが、その社会的インパクトも同時に問われる。

・多くの上場企業はもっと投資家と対話をしたいと思っている。しかし、一定の規模と魅力ある成長ストーリーがないと機関投資家は寄ってこない。当然であろう。自らのポートフォリオをアクティブに構築するに当たっては、必須の条件である。

・しかし、日本の代表する上場企業であるなら、個々の会社に必ず魅力はある。その魅力が色あせていれば、再度輝かせるべく手を打っているはずである。本気で手を打っていれば、それに賛同してくれる投資家は、必ずいるはずである。もし決め手がなく呻吟しているだけであれば、将来は危うい。

・投資家は世界をみている。アクティブ投資家はもちろん、パッシブ投資家もインデックスに期待している。いかにポートフォリオに組み入れてもらうか。インデックスに組み入れられるようになるか。企業価値創造の戦いは激化している。

・「資産運用立国実現プラン」では、家計、企業、運用機関のインベストメントチェーンにおいて、資産所得倍増を目指して、各機能の強化に力を入れてきた。1)企業はもっと稼げ、2)運用機関はもっとパフォーマンスを上げよ、3)家計はもっと金融資産に投資せよ、4)政策はそれが上手くまわる仕組み作りに全力をあげよ、という展開である。

・企業にはコーポレートガバナンス改革を、運用機関にはスチュワードシップ改革を、アセットオーナーにはフィデューシャリーデュティの徹底とプロフェッショナルな運営を、金融サービス機関には、顧客本位の業務運営を求めている。インベストメントチェーン全体の機能の高度化、プロフェッショナルとしての信用力の向上の仕組み作りが求められている。

・経済環境をみると、トランプ関税が波乱を巻き起こしている。日本では、物価、金利、賃金が上がり始めた。インフレの世界にまだ慣れていない中で、金融政策の舵取りは上手くいくのか。

・金融機関は、引き続き金融商品及びサービスの多様化と高付加価値化に力を入れていく。新NISAの広がり、事業再生、事業承継、アジア市場への展開、富裕層へのウェルスマネジメント、PEファンドなどのオルタナ商品、AIの活用などである。

・東証が推進した「資本コストや株価を意識した経営」は大きな成果を上げてきた。資産運用業を成長の柱にして、グローバルに戦えるところまで浮上させようとしている。運用力ではオルタナの強化に力が入ろう。

・GX金融センター、香港に代わるアジアのハブ、スタートアップの拠点、アジアのゲートウェイなど、アドバルーンはいろいろ上がっている。日本版EMP(新興運用業者の育成)にも力が入っている。

・こうしたインベストメントチェーンの好循環は、動き出したら止まらないというスノーボール(雪だるま)効果を発揮できるだろうか。JPXの山道社長は、その継続と加速に引き続き力を入れていく。

・では、インベストメントチェーンをいかに活性化していくか。最近話を聞いた経営者や社外取締役は、PBR=ROE×PERという関係式において、ROEよりもPERを問題視していた。収益性もさることながら、成長性をいかに高めるか。そのためのアニマルスピリットをどのように具現化していくか。ここが問われている。

・選択と集中に向けて、貯めた資金をどこに使うのか。ESGと金儲けは両立できるので、そのストーリーをもっと明確にして、実践する必要がある。そのためには、投資家と対話して、そのフィードバックを経営改革に活かしていく。PERを上げる方策について、投資家と対話していく必要があろう。

・もっと企業価値を上げよ、株価を上げるためにリスクを取れ、もっとレバレッジを効かせて資本効率を高めよ、と言われる。その場合、どこまでリスクがとれるのか。リスクアペタイト(選好)とリスクキャパシティ(許容度)をいかにマネージしていくか。その決断について、投資家は知りたいのである。

・個人投資家はどうすればよいのか。新NISAで若い投資家の参加が増えている。資金格差、世代格差、情報格差の中で、積立投資の壁、分散投資の壁、長期投資の壁を乗り越えようという挑戦が始まっている。

・金融リテラシーを高める学びやリスキリングも始まっている。身の回りで、もっとお金の話、投資の話、企業価値の話、インベストメントチェーンの話をして、互いの理解を深めつつ、投資を実践していきたいと思う。

株式会社日本ベル投資研究所
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