G7の緊急共同声明
2月12日から13日にかけて、外国為替市場が慌しく動きました。その要因になったのは、主要7カ国(G7)の財務相・中銀総裁が発表した緊急共同声明です。その内容は、「為替の水準は基本的に市場が決める」との考えを共有した上で、各国が行っている財政政策や金融政策は、「それぞれの目的を達成するためのもの」であり、あからさまな介入などで、「意図的な為替水準や目標を誘導しない」ことなどがポイントとなります。
声明発表後、当初は日本の「アベノミクス」による円安容認と受け止められ、円安が進行したものの、その後はあるG7当局者が「円安の容認は誤っている。声明は円相場の過度の変動に懸念を示したもの」と発言し、一気に円高となる場面がありました。
結果として、声明の解釈を巡って逆に為替市場が混乱してしまった格好ですが、緊急声明の背後にあるのは、今週末にロシアのモスクワで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議向けの対策と思われます。
そもそも、日本だけでなく、多くの先進国も金融緩和策などを実施しており、自国通貨が安くなる一方、新興国からしてみれば、カネ余りの先進国からの資金流入や自国通貨高の傾向が生じているため、先進国に対して不満が高まっている状況です。そんな中、最近特に目立っている日本の「アベノミクス」は格好の標的となります。
日本を名指しで「通貨競争を仕掛けている」と槍玉に挙がることで、他の先進国の政策にも批判が向かってしまうのを牽制するための緊急声明と考えられます。あくまでも、「金融緩和などの政策には目的があるが、それに付随して発生している自国通貨安は決してねらったものではなく、市場が決めている」というロジックです。
実際のG20でも、麻生財務相が「アベノミクス」の本来の主旨はデフレ脱却であり、通貨安ではない(円高修正の意味はあります)ことを説明するようですが、先進国(特に欧州)の一部では、「確かにアベノミクスそのものは支持するけど、急ピッチな円安進行はちょっとね・・・」という本音が見え隠れしているのも事実です。
とはいえ、日本国内では、要人による「適正な為替水準は1米ドル100円」とか、「日経平均1万3,000円を目指す」など、具体的な水準に言及する発言が目立ちます。14日も、次期日銀総裁の有力候補が、「財務省と日銀の共同基金で外債を購入」、「1米ドル90~100円程度までは均衡への回帰」との認識を示しており、こうした発言が、「やっぱり日本は通貨競争を目論んでいる」など、G20での日本叩きの材料になってしまう可能性があります。
「円安ねらいの政策」と誤解されず、「アベノミクス」に対する各国の理解を得ることや、目標達成に向けた政策運営を進めていくためには、敢えて「余計なことを言わない」ことも時には重要であると言えます。
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