4万3000円台後半まで駆け上がった日経平均は、当然の一服となって4万2000円台半ばまで調整している。前回のレポートで、ファンダメンタルズから乖離しており調整は必至と述べた通りの展開である。
しかし、前回のレポートでは、市場は「いま見えているデータ」をもとにした理論値からは乖離しているが、その先の業績の上方修正を織り込んているとすれば正当化できるとも述べた。
その時点からは長期金利が水準感を変えて上昇している。理論株価のモデルも若干の修正が必要だ。
期待成長率0.2%とすると3万8000円台を割り込む水準を示唆

P : 株価
E : 利益(予想EPS)
Rf : 安全資産利回り(10年国債利回り)
ERP : 株式リスクプレミアム(平均5%)
g : 期待成長率
グラフ1および表1は、いままで0%としていた期待成長率(上記式のg)を0.2%としたモデルである。
見た目はほとんど変わっていない。理論株価は低下の一途をたどっている。業績予想が下向きで長期金利は1.6%台まで上昇しているので、無理もないことだ。現在のファンダメンタルズから3万8000円台も割り込む水準が示唆される。
しかし、前回同様、市場が正しいとすれば、現在の4万2000円台半ばという株価水準は長期金利を1.6%としても、今後5%増益程度に業績が上方修正されるならじゅうぶん正当化できるレベルのものである。
成長期待の芽生え_GDP統計をけん引した企業の設備投資
今回、理論株価のモデルの成長率をプラス成長としたのは、成長期待が芽生え始めたのではないかと考えたからだ。そのきっかけは先日公表されたGDP統計にある。
内閣府が15日に発表した4~6月期国内総生産(GDP)は年率換算で前期比実質1.0%増だった。これで5四半期連続でプラス成長となる。実額は年換算でみると実質で562兆9878億円、名目で633兆3047億円といずれも過去最高を更新した。
けん引役となったのが設備投資で、前期に比べ実質で1.3%増えた。1~3月期の1.0%増から加速し、5四半期連続で前期を上回った。
(実質、季調済み実額を2020年6月を100として指数化)
足元では米関税政策などで投資計画を見直す企業の動きが出ていることもあって、先行きを慎重にみる声もあるが、企業の設備投資意欲は潜在的に強いことが日銀短観などでも示されている。背景にはインフレに転換したこと、人手不足への対応、DXやAI投資のニーズ加速など複数の要因がある。これまで日本経済が成長できなかったのは、ひとえに企業の設備投資が不足していたからだ。マクロ的に見ても資本不足は明白で、これが低成長のボトルネックになってきた。
日経平均理論値4万5600円まで正当化
ここに改善の兆しが見られるなら、株価のモデルでもプラス成長を仮定に入れても良いだろう。この流れについて、より確信度が高まれば、期待成長率「g」を日本の潜在成長率とされる0.5%程度まで引き上げることも検討できる。
その場合、長期金利も(良い金利上昇で)1.7%超になるだろうが、金利高と株高は共存し、10%増益まで業績が上方修正されれば4万5600円まで正当化される。