日本株市場は冷静にプライシングされている - つまり、割安でも売られ過ぎでもなく適正な値

2025/04/04
  • 日経平均は淡々とファンダメンタルズの変化を織り込んでいる
  • 理論株価マトリックスでわかる日経平均プライシングの妥当性
  • 日経平均はフェアバリューである

日経平均は淡々とファンダメンタルズの変化を織り込んでいる

「4日の東京株式市場で日経平均株価が大幅に続落した。前日からの下げ幅は一時1200円を超え、取引時間中としては2024年8月上旬以来、約8ヶ月ぶりに節目となる3万4000円を割った。トランプ米大統領が発表した相互関税による世界景気後退への警戒感が強まり、市場に動揺が広がっている。」

【問題】これは某メディアの市況解説記事です。この文章には間違いがひとつあります。それはどの箇所でしょう。

【解答】「市場に動揺が広がっている」という箇所。理由は、動揺など広がっていないから。

株式市場は非常に冷静な振る舞いを見せている。連日、日経平均は1,000円を超える急落を続けているが、それはパニック売りとか狼狽売りとかではなく、淡々とファンダメンタルズの変化を織り込みにいっているに過ぎない。

理論株価マトリックスでわかる日経平均プライシングの妥当性

3月21日付のストラテジーレポートで日経平均のフェアバリューは3万8000円だと書いた。それはその時点の予想EPS(1株当たり純利益)と長期金利の水準からすれば、その通りであった。ところが前週末には日経平均は3万7000円近辺まで下落した。日銀の利上げ前倒し観測などが強まり長期金利が1.6%目前まで上昇したからである。それが理論株価のマトリックスで言えば、(1)の段階である。

ところが先週末の日本時間の夜から様相が変わり始める。NY市場の急落を受けて、今週初めに日本株相場は急落した。その日の朝に出演したテレビ東京モーニングサテライトや夜に行ったMonday Night Liveの解説では、3万5000円台があってもおかしくないと述べた。それはマーケットが今期の減益を織り込み始めたからだ。それまでは「現在の予想EPS」を使っていた。つまり、今期の増益率は0%、前期から横ばいという仮定であった。しかし、月曜日(3月31日)の段階では米国のスタグフレーションのリスクが高まり、今期の業績が減益になるリスクが高まった。日経平均の急落はそれを織り込む動きであったと思われる。それが理論株価のマトリックスで言えば、(2)の段階である。

トランプ氏による相互関税の発表を受けて、日経平均は3万5000円の大台も割り込んでしまう。それが(3)である。しかし重要なことは、国内景気の悪化懸念を受けて長期金利が急低下したことだ。業績の悪化懸念は今期10%減益を織り込む水準に下がったが、金利も1.36%に低下したことで、まだ3万4000円台にとどまった。

そして今日4日の昼現在、日経平均は3万3500円程度にまで下落している。長期金利も急低下して1.185%程度である。ここから逆算すると、市場は今期15%減益をどうやら織り込む動きと考えられる(4)。

このように見てくると、市場はやみくもに売られているわけではなく、今期の業績悪化の度合いを徐々に慎重に仮定しながら、それでも長期金利の低下との兼ね合いを計りつつ、プライシングがなされているように思う。もう一段の下げがあるとすれば、20%減益を織り込む動き。その時、長期金利が1.10%に低下すれば、日経平均は3万2000円となる。そこまでくれば、現段階の想定とすればじゅうぶんだろう。

出所:QUICKデータよりマネックス証券作成

日経平均はフェアバリューである

これまでは日銀の利上げとそれを反映する金利上昇が日本株の重石であった。これからは米国発の世界景気減速懸念とそれを受けた日本企業の業績悪化が悪材料となる。しかし、これまでの悪材料であった日銀の利上げは遠のくだろう。それが長期金利上昇の一服~低下を促し、それはまた円高の唯一の材料である日米金利差拡大というものもなくなることを意味する。マイナス材料は増えるわけではない。新たなマイナス材料が浮上する一方で、これまでの悪材料が(いったんは)消失する可能性が出てきたことは、せめてもの希望である。

あらためてレポートのタイトルについて言及すると、ここで見た通り、日経平均はフェアバリューである。ということは売られ過ぎではないので、決して割安ではないということである。よって、値段だけみて大幅に下がったから「買い」という判断には至らない。ここから株価がどう推移するかを判断するには、今後のさらなる情報を待つ必要がある。

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広木隆「ストラテジーレポート」   マネックス証券株式会社
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