不正と不祥事への関り

2024/10/21

・誰でも悪いことはしたくない。いつも正々堂々としていたい。そう思いたいが、悪いことを平気で行う人がいる。

・悪いこととは何か。それは自分が決めることで、他人には関係ないという人もいよう。普通は、法律を破る法令違反は悪いことである。次は、国の法律ではなく、自らが属する組織のルールに違反することである。さらにいえば、社会の倫理や道徳に反することも悪いことにあたる。

・いずれの場合も反論はあろう。そのルールは誰が決めたのか。本当に守る必要があるのか。解釈しだいで違反といえないこともありうるのではないか。あるいは、そんなルールは知らなかった。悪いとは思っていなかったので、それで罰せられるとは心外である。

・いつでもグレーゾーンはある。ここまではセーフ、ここからはアウト、その合間はどうもはっきりせず、意見が分かれるということもあろう。では、どうすればよいのか。

・株式取引のインサイダー情報について考えてみよう。上場企業のまだ公開されていない情報を、何らかの形で入手して、それで株式の取引をうまくやり、利益を上げれば、それはインサイダー取引となる。明らかに法令違反でつかまる。社会的制裁はきついものとなろう。

・若い人にとっても、株式取引は身近になりつつある。上場会社の社員であれば、社内ルールの研修を受けて、取引の手続きについて十分知っているはずである。

・自分の仕事上で知りえたこと、社内の身の回りで知ってしまったこと、取引先とつき合っている中で入ってきた情報などのうち、明らかに株価にプラスのこと、マイナスのことが分かってしまう場合、どうするか。

・それらはインサイダー情報であるから、3つの対応をとる必要がある。1つ目は、それを使って株の取引をしないことである。2つ目は、その情報を第三者に話さないことである。3つ目は、怪しいと思ったら、その情報について、コンプラ部門に問い合わせて、対応を確認することである。

・ところが、金が儲かりそうとなったら、その情報を使って一儲けしたくなる。自分がやばいとなったら、親族の名義で勝手に取引をする、ということをやりたくなる。知り合いと共謀することもよく起きる

・あるいは、「ねえねえ知ってる」と言って、友人や知人につい話したくなる。話題として面白いことは話したい。ここをぐっと我慢するのは、なかなか勇気がいる。

・逆に怖気づいてしまうかもしれない。常に不正に踏み込んでしまわないように注意するとなったら、自由に話せない、動けない。これではどうしようもない。やっぱり株式投資は自分に合わないと距離をおきたくなる。

・しかし、その必要はない。ルールを守り、コンプライアンスを頭に入れて、リスクマネジメントに心がけて、どうかな、と思ったら、しっかり相談すればよい。

・社外取締役は、執行サイドの取締役(社長以下)を監督する。監査役や監査等委員取締役は、その企業の内部監査が本当に機能しているかを監査する。

・それでも、粉飾決算を行う会社がある。不正取引を行う役員がいる。ルールを破って、不正を行う社員がいる、1人ではなく、グルでやっている。短期ではなく、長い間不正がまかり通っている会社もある。どうしてそういうことが起きるのか。

・高野教授(関西大学)の「不祥事をなくす経営」(日経やさしい経済学)が興味深い。不正のトライアングルについて解説している。それを解釈してみたい。

・トライアングルとは、動機、機会、正当化の3つの要素が揃うことで、そうなると不正が起きやすいという。例えば、①納期を守るという動機、②品質検査はごまかせそうという機会、③それで特に問題は起きないという正当化である。確かにありそうにみえる。

・納期が守れないのはなぜなのか。受注から納品までのプロセスを見直して、手を打つ必要がある。品質検査の手順は本当に妥当なものなのか。その的確性を見直す必要がある。誤魔化しても問題が起きない、ではなく、問題が起きたらどうなるのかを想定して、対策を立てるべきである。

・課題に対して向き合わず、1)目先に悩み、2)勝手に一線を越え、3)いい加減に手を打つ。ジレンマの中で、容易な線引きをして、それで済ませる組織風土を容認してしまう。

・トップや上司に忖度して、筋を曲げてしまうことは起こりうる。それを起こさせない仕組みがあるか。そして、「ダメなものはダメ」というカルチャーが醸成され、定着しているか。

・不正を未然に防ぎ、不正に関わらないようにすると、組織の中で孤立しかねない。うまく立ち回って戦う覚悟が求められる。しかし、生真面目に討死する必要はない。

・よい会社かどうかは、ここをよくみていく必要がある。自動車メーカーの品質問題、医薬品メーカーの品質問題などは、本当に嘆かわしい。関連企業の再生を注視したい。

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