ここからの円安には、市場は警戒感を強めそうだ
長らく上限値を大きく乖離して超えていた日経平均株価が、26日時点でTIWが算出する「日経平均妥当レンジ」の上限値に近接する形となりました(26日時点:35,392~37,983円)。これは日経平均株価が15-19日の週に大きく調整したことと、対象となる決算期が新年度へ移行し始めたことによる予想EPSの上昇が要因として挙げられます。
24年度の企業業績見通し(=アナリスト・コンセンサス)が楽観的であったのかどうかはまだ検証できるだけのデータがありませんが、ここまで発表された決算において主要企業では予想を大きく上回るような内容はまだ見られないように感じています。
今週は営業日が3日間でゴールデンウィーク(GW)にあたることや、米国の主要指標の発表が続くこと、また5月15日までは決算発表が続くことなどから荒れ模様の相場展開になる可能性もありますが、GW明けは買い場を模索する局面を期待します。
先週の米国市場は、25日発表の1-3月の米実質GDP(年率換算)が前期比+1.6%(10-12月+3.4%、予想+2.4%)と低い伸びとなったことや、26日発表の3月の消費支出(PCE)価格指数が前月比+0.5%(前年比+2.8%)と年初来で最大の伸びとなったことが懸念されたものの、アルファベットやマイクロソフトの好決算(25日夕発表)を受け、特にナスダック指数が上昇しました。
他方で米長期金利の高止まりと、日銀金融政策決定会合(25-26日)において金融政策に変更はなく、会合後の植田総裁の記者会見においても利上げに消極的な姿勢が伺えたことから円安・ドル高が一段と進行しました。日本の祝日にあたる昨日(29日)には投機筋による仕掛けから一時160円/ドルを付けましたが、その直後に155円台にまで円高に揺り戻しが生じました(財務省による介入と市場では見られています)。
今週は、米国主要指標の発表等が集中します。30日:コンファレンスボード消費者信頼感指数(4月)、5月1日:ISM製造業景況感指数(4月)、3日:米雇用統計(4月)。
加えて30日~1日に米FOMCが開催されます。金融政策の変更は行われないと見られていますが、会合後の記者会見でパウエル議長がタカ派(利下げに慎重)の姿勢を強めれば、円安基調が強まることが予想されます。
本日(30日)の日本株市場には力強さがありましたが、これは為替介入が行われたことに対する安心感と見ることもできます。裏を返せば、円安の一段の進行に市場が警戒感を持っていると言えそうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。