サマーズ氏は正しいのか!?中立金利論争再び?
市場の注目度が高かった米個人消費支出(PCE)価格指数(2月・3/29発表)は、前月比+0.3%と1月(同+0.4%)より低下しました。前年同月比では+2.5%と1月(+2.4%)から上昇したものの市場予想と同じでした。29日の米国市場(株式・債券)が休場であったことから、この結果に対する市場の反応は定かではありませんが、影響はほとんどなかったと思われます。
しかし、4月1日発表のISM製造業景況感指数(3月)は、50.7と2月(47.8)及び予想(48.5)を大きく上回りました。それを受けてFRBの利下げ時期に対する観測が後ろ倒しとなり、米国10年債利回りは4.3%台へと上昇し(3/28は4.21%)、ドル円は151円台後半へと円安圧力が増しています。
今週の米国統計は、2日:雇用動態調査(2月・JOLT)、3日:ADP雇用リポート(3月)、ISM非製造業景況感指数(3月)、5日:雇用統計(3月)と続きます。これらの統計の中に強い経済状態を示す数値が見られるとなると、さらにFRBの利下げ観測の後ズレから一段と円安に向かうプレッシャーが強まることとなりそうです。政府関係者が介入の可能性を示唆する(=否定しない)発言を行うことで円安進行を押しとどめてはおりますが、一気に決壊する可能性も考えられそうです。もしそうなった場合は、日銀の再利上げ時期が早まることが意識されることとなり、株価押し下げ要因となりそうです。本日(2日)の日本市場で成長株が値を下げていることがそれを示唆しているように思われます。
アトランタ連銀のボスティック総裁は、(その理由の詳細は分からないが)年内の利下げは1回にとどまるという予想を示しています。同様に利下げに批判的なのがローレンス・サマーズ元財務長官である。同氏はFRBが想定する中立金利(2.5%前後)に疑問を示しています。政策金利が5.25~5.0%と高い状態にもかかわらず、強い経済を維持しているのは中立金利が4.0%近い水準にあることが理由であると述べ、FRBを批判しています。今週以降に示される経済指標によっては中立金利論争が再び活発になることも考えられます。
いずれにしても強い経済指標はFRBの利下げ開始時期を先送りすることに繋がります。利上げを視野に上昇してきた米国株が踊り場を迎えるようであれば、円安となっても日本株もマイナスの影響を受けるかもしれません。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。