正・副総裁の“緩和的”発言の真意は?
2月7日に発表された半導体設計最大手であるアーム社の1-3月売上高見通しが予想を上回ったことから、半導体・AI関連を中心に株式市場が高騰しました。9日にはS&P500指数は5000の大台乗せとなり史上最高値を更新しました。
日本市場では米国株市場の騰勢と、アーム社の大株主であるソフトバンクG(9984)の上昇、さらには円安の加速から上昇基調が続いています。連休明けはアナリストコンセンサス予想もやや上方にシフトしたこともあり、株価は一段と騰勢を強めています。
21日に米エヌビディアの決算発表が予定されていますが、AI・半導体への熱狂はまだ継続する可能性もありそうです。
円安ドル高が一段と進んでいるのは、米国金利(国債利回り)の上昇が主因と考えられますが、8日に日銀の内田副総裁が「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げしてゆくようなパスは考えにくい」、9日に植田総裁が「緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と発言したことによって、緩和縮小に消極的だと市場に解釈された面もあるように思われます。
しかし、円安が進行することで輸入物価の上昇が家計への負担を強めていることなどから、金融正常化は喫緊の課題になりつつあります。市場では4月の会合(4/25-26)でのゼロ金利解除が有力視されているようですが、“緩和的”をことさら強調するのは、それ以前の3月会合(3/18-19)に動くための環境づくりとの見方もできるかもしれません。
今週は、13日:米消費者物価指数(1月)、15日:米小売売上高(1月)、16日:米生産者物価指数(1月)、ミシガン大学消費者信頼感指数(2月)などが予定されています。FRBがさらなる利上げを行う可能性は皆無と見られる中では、金利上昇を招いたとしても強い経済指標に市場は好反応を示すと考えます。
日本株については、モメンタム的には上昇基調がまだ続くのかもしれません。行くところ(日経平均株価 史上最高値)まで行くのかもしれませんが、その後に大きな反動があるように懸念しています。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。