日経平均の過去最高値更新は25年夏から秋頃というのが現状の見通し
2023年もあと僅かとなりました。昨年末から先週までのTOPIXの上昇率は23.5%と上昇率の高い1年でした。筆者は、慎重スタンスを継続したことから結果的にはこの波をとらえられなかったと反省しています。
TIWが算出している日経平均妥当レンジは来期および再来期のコンセンサス予想EPSと長期金利(10年国債利回り)等からエクイティ・リスク・プレミアムが6.5%~7.0%に収まる株価水準を逆算して算出し、これを12カ月移動平均で按分しています。現実の株価は、主要国の金融政策、金融システム不安、疫病パニック、地政学リスクなどから必ずしもこのレンジにとどまるとは限りませんが、長期的にはこのレンジ内に回帰してくる傾向にあります。
もちろん、金利だけでなく、予想EPSも流動的であり、また予想EPSは時間の経過とともに対象とすべき期間が異なってきます(そのため12カ月移動平均を用いているのですが、3月期決算企業の対象決算期が変更となる4月下旬から5月中旬は変化が大きくなります)。
現時点では日経平均株価は妥当レンジの上限を1000円程度上回っており割高感がありますが、(コンセンサス予想は変わらないとして)時間の経過による移動平均EPSの変化を先読みするならばこの株価水準(3万3千円台前半)は半年後(24年5月)にはレンジ内に収まってきます。
筆者は、米国経済の減速や中国・欧州の停滞、行き過ぎた市場の米利下げ見通しなどから、弱気のスタンスを継続していますが、時間の経過に伴って株価妥当レンジが現実の株価に追いついてしまう可能性はあります。それでも高値追いは禁物と考えています。
2024年中に日経平均過去最高値(38,915円87銭)を更新するような予測が市場の中では増えつつあるように見受けられます。
それでは、コンセンサス予想からの妥当レンジでは日経平均株価の過去最高値更新はいつ達成されると考えられるでしょうか。 予想EPSが年平均10%程度増加し、金利が変わらないとの前提を置けば、おおよそ2025年夏~秋頃と予想されます。市場ほどは楽観ではありませんが、長期的には楽観論者に分がありそうです。
ただし、非常に懸念される点としては、日本の製造業の競争力低下があげられます。20日に発表された11月の貿易統計では3カ月ぶりに輸出(金額)が前年同月比▲0.2%とマイナスになりました。金額ベースではわずかではありますが、数量指数は▲5.6%と減少しています。まだ11月は150.34円/ドルと金額ベースには円安効果(2.7%)が残っていた時期でした。円安効果がほぼ消失する12月からは金額ベースでもマイナス幅が拡大する可能性も考えられます。
末筆ですが、本年はつたない文章をお読みいただき有難うございました。
明年は皆々様にとって一層の飛躍の年になりますことをお祈り申し上げます。
藤根 靖昊
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。