9月FOMCの政策金利見通しまでは穏やかな(硬直的とも言う)市場が続く、小型成長株に勝機がありそう!
ジャクソンホール会議のパウエル議長講演(25日)は結果からしてみれば“無風”だったと言えそうです。講演前に大幅な下落が生じて波乱含みではありましたが、講演後に下落前の水準に戻したことから、結果的には市場の杞憂に終わった形でした。注目点の一つであった「中立金利」への言及も、“正確に捉えることは難しい”として距離を置き、データ次第で柔軟に政策運営を行うことの重要性が強調されました。
しかし、議長の発言は市場が恐れていたほどがタカ派的ではなかったかもしれませんが、決してハト派に傾いたわけではありません。「トレンドを上回る成長が続くという新たな証拠があれば、インフレのリスクが高まり一段の金融引き締めを正当化するだろう」、「労働市場の逼迫が和らぎそうにないとの証拠があれば、政策対応が必要になるだろう」。こうした発言をこれまでよりもややタカ派的であると見る向きも多いようです。そのため、米国債利回りは一時期よりは低下したとはいえ、比較的高止まりが続いています。年内にあと3回のFOMCが予定されておりますが、9月(19-20日)は見送られるとしても11月(10/31-1日)での利上げを予想する見方が増えているようです。
今週は主要な米国経済指標の発表が続きます。29日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、30日:ADP雇用リポート、9月1日:ISM製造業景況感指数、米雇用統計(いずれも8月分)。ISM製造業景況感指数を除けば他はやや弱含みと予想されておりますが、大きくぶれない限りは市場への影響は限定的であると考えます。その後に続く9月の米国指標にも大きく一喜一憂する必要はないと考えています。注目すべきは9月FOMCにおいて公表される経済・金利見通しです。6月のFOMCにおいて、政策金利見通しは23年末5.1→5.6%、24年末4.3→4.6%、25年末3.1→3.4%と上方修正されました。次回は、引き締め的な高水準の政策金利をどの程度維持するかという面で、特に24年末の見通しが注目されると考えます。
国内においては前回の日銀会合において実質1%への上限引き上げが行まれたばかりであり、また10年国債利回りは23日に0.675%を付けましたがまだのり代は多く、消費者物価指数が生鮮及びエネルギーを除く総合で4%であっても緊迫感は出ていません。
日本株は米国市場次第の面はありますが、日米金利差から円安進行も追い風になりそうであり、比較的穏やかな展開を予想しています(上下に硬直的ともいえるかもしれません)。と申しても中国経済の停滞、原発処理水問題、原油価格上昇に絡んだ地政学的要因などには注意は必要と考えています。
企業業績で注目すべきは、グロース市場の企業業績が急激に上向いていることです。市場全体の動きが緩やかな(やや硬直的)環境下では小型成長株に大きなチャンスがあるかもしれません。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。