コンセンサス予想EPSからは日経平均3万円は正当化できるが・・・
3月期決算が出そろいました。12日時点のアナリスト・コンセンサス予想EPSは、従前予想(3月31日時点)との比較ではほぼ同水準でした。12日時点の日経平均株価の今期ベースの予想EPSは、1763.85円、3月末時点(来期)では1773.79円でした。来期ベースの1916.66円は3月末時点(再来期)では1925.85円でした。筆者も含めて、今期(23年度)の企業業績見通しは慎重なもののなるとの見方もありましたが結果的には悪くない(むしろ良い)内容でした。
この予想EPSをベースにインプライド・リスク・プレミアムを6.5~7.0%と置いた場合の日経平均株価(妥当レンジ)は29,050円~31,250円と算出されます。その結果、4月下旬からの日本株の上昇は、企業業績見通しの面では正当化できると言えるかもしれません。
しかしながら、米地銀の信用不安や米景気の後退懸念、あと2週間に迫った米債務上限問題を発端とする米国債のデフォルトリスクなどは株価にはあまり織り込まれていないと思われます。日経平均株価3万円の大台乗せが目前に迫っていますが、達成後は伸び悩む展開を予想いたします。
12日発表のミシガン大学消費者態度指数(5月)は57.7と4月の63.5から大きく低下しました(予想は63.0)。15日発表の5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は受注と出荷が急低下し、約3年ぶりの大幅低下となりました。
16日には4月の米小売売上高・鉱工業生産指数が発表されますが、こちらでも景気後退のサインが示される可能性が懸念されます。
10日発表の米消費者物価指数(4月)は前年同月比+4.9%(予想+5.0%)、11日発表の米生産者物価指数(4月)は+2.3%(予想+2.4%)といずれもわずかに予想を下回りましたが依然として高い水準が続いています。FRB高官の発言を見る限りでは、(市場が期待する)年内の利下げは極めて希望的と思われます。
中国経済に対する回復期待も剥落しつつあります。16日発表の工業生産(4月)は+5.6%(予想+10.9%)、小売売上高(4月)+18.4%(同+21.9%)、固定資産投資(1-4月)+4.7%(同+5.7%)といずれも市場予想を下回りました(前年同期はロックダウンにあったために見た目の数値は高めではありますが)。9日発表の中国貿易統計(4月)のドル建て輸入は前年同月比▲7.9%とマイナス、輸出は+8.5%でしたが季節要因を調整すると▲9%になるとの試算もあるようです。
18日に4月の貿易統計(日本)が発表されます。10日発表の4月上中旬分速報では、輸出+3.9%、輸入▲1.2%となっています。これは金額ベースですが、為替の影響を考慮すると輸出数量は依然としてマイナスが続いている可能性が示唆されます。
ここまでの日本株の上昇は現状の企業業績見通し(コンセンサス)を踏まえたものであったとしても、米国経済の減速懸念や中国の経済回復など先行きに対する楽観が強いと思われます。
目先の天井感は近いように思われます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。