11月18日妥当レンジ 27,939円~30,167円
次第に強まる業績懸念

2022/11/22

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<中国経済も減速感強まる、日本企業への影響も必至>
■15日に中国国家統計局が発表した10月の社会消費品小売総額は前年同月比▲0.5%とマイナスとなった。11月11日の「独身の日」のセールスも例年のような高揚は見られなかった。10月の工業生産は+5.0%と前月(+6.3%)から減速。16日にQUICK・ファクトセットが発表した民間予想では22年の中国実質GDP成長率は3.3%に留まる見通しであり、年初の見通し(5.1%)からの減速が顕著である。同じく16日に発表された中国主要70都市の新築住宅価格動向(10月)も58都市で前月から価格が低下した。足もとでは新型コロナ感染が再び拡大していることも懸念される。14日にバイデン米大統領と習近平総書記との会談が行われたが、経済面での雪解けは不透明である。
■米国・欧州がインフレ対策で利上げを推し進めていることで景気悪化が懸念される。こうした環境下で日本企業の業績への影響も顕在化することが予想される。22日の日経朝刊マーケット面(スクランブル)において、「強すぎるアナリスト予想」と題して現在のアナリストの強気の投資評価が維持できないだろうと指摘する。同新聞記事が対象としているのは22年度(今期)であるが、23年度(来期)を見るならば既に兆候は色濃く表れつつある。TIWが算出している日経平均のコンセンサスDI(前週比で予想EPSが変化した企業の内のプラスになった比率)は前週(11/14-18)において来期予想ベースで40%を下回った。欧米での経済減速と円安効果が剥落する来期においては減益は不可避のように思われる。前週も述べたが、株価は、米利上げ停止によるバリュエーション改善の恩恵を得る前に、来期業績への減益見通しが織り込まれる過程を経験する必要があると考える。来期にマーケットの視線が向く年明け以降に谷が生じると考える。
■今週は、日本(23日)・米国(24日)ともに休日があり、小動きな展開が予想されているが、23日:FOMC議事録要旨、マークイットPMI(米・欧)、25日:ブラックフライデーの売上初速などは気になるところだ。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,939~30,167円 (前回27,800~30,000円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月18日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月18日)

今期予想EPS 1796.38 (前週1839.48円)
来期予想EPS 1878.96 (前週1822.47円)
再来期予想EPS 1987.87 (前週1979.15円)
今期予想PER 15.53 (前週15.36倍)
来期予想PER 14.85 (前週15.51倍)
再来期予想PER 14.04 (前週14.28倍)
来期予想PBR 1.10 (前週1.11倍)
来期予想ROE 7.39% 前週7.19%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.92% (前週6.70)

11月18日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価は28,000円を挟んで一進一退。米利上げペース鈍化と入国制限の緩和によるインバウンド拡大はプラスであるが、円安のプラス効果は限定的であり、海外経済の減速が今後は反映されることを考えると、1-3月に調整局面が訪れる可能性は強まりつつある。
コンセンサス予想EPSにおいて、前週比で今期が43円のマイナス、来期が56
円のプラスとなっているのはほぼ特定銘柄(ソフトバンクG)の影響による。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.0%→43.543.547.346.939.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.0%→42.445.550.0%→45.149.2
全期間で50%割れ。来期ベースのダウントレンドが加速。業績悪化局面が明確に。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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