株式会社キャンバス(4575 Growth)
薫風かおる季節を前に朗報を待つ

2025/03/06

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

欧州でのPhase3開始に向けた現況
2024年2月、キャンバスが欧州でのPhase3を目指すことを決定してから、ほぼ1年の歳月が流れた。2024年6月には、欧州でのPhase3を断念した場合のリスクヘッジとして米国でPhase2bを行うことができるよう準備もしていたが、米国のCROへの前渡金の一部を返還させたことにより、欧州でのPhase3の可能性が高まったことが示唆された。さらに8月にはEMAよりCBP501がすい臓がん対象としてオーファンドラッグ指定を受け、Phase3の開始に向けて前進している印象を受けた。ただ、11月に、 Phase3で使用するCBP501の製造・製剤の工程に関する欧州規制適合対応の作業が遅れPhase3の開始は2025年になることが開示されたが、Phase3開始に向けたEMAとのやり取りが進んでいるとのことであった。2025年2月の会社説明会では、「欧州でのPhase3開始の可能性が全くないのであれば、既にそのような反応が来ているはずと考えられること、また、最近のEMAからの質問内容には、プロトコルの詳細に関するものがあり、先方が真剣にPhase3を検討しているものと、キャンバスでは手ごたえを感じている。」との説明がなされた。残存する第20回新株予約権の行使期限(6月4日)までに、EMAよりPhase3開始承認の朗報が届き、より高い価額で行使が完了することがキャンバスにとって望ましいシナリオであろう。薫風かおる頃までには、EMAからの朗報を期待したい。

Phase3中間解析までの開発資金には目処がついている
2024年12月末の現預金残高は28億61百万円であった。仮に、未行使の新株予約権がすべて行使下限価格で行使されたと仮定しても、5.8億円のキャッシュ・インが見込まれるため、合計34億円ほどの資金が確保できると想定される。一方、欧州でのPhase3実施費用は合計45~50億円が見込まれている。中間解析が2年後(2026年央頃)に行われると仮定すると、34億円の資金は、運転資金や基礎研究費を加味しても、Phase3中間解析までの遂行をカバーできるものと考えられる。

CBT005:キャンバスのがん免疫に関する知見の結晶
2025年1月、免疫系抗ガン剤化合物CBT005が米国にて特許査定を受領したことが明らかになった。同時に作用機序の一端が開示された。CBT005は、現在注目を集めている創薬分野の一つであるペプチドを用いたPDC(ペプチド薬物複合体)の一つである。薬物部分はTLRアゴニストとなっており、抗原提示細胞のTLRを刺激して、CD8T細胞(キラーT細胞)を活性化する狙いがある。しかし、TLRは全身の細胞に存在するため、がん細胞のみを標的とする工夫(DDS;Drug Delivery System)が必要である。CBT005はDDSを担う部分として、ADC(抗体薬物複合体)で用いられる抗体ではなくペプチドを採用している。抗体を使用すると、血管内皮細胞等に発現しているFcnRを介して、抗体がリサイクルされ、全身の血管内皮でTLRアゴニストが働いてしまうためである。また、活性化しているがん細胞を標的としているのではなく、あくまで死にかけているがん細胞を使って抗原提示細胞を活性化させる点がユニークである。活性化しているガン細胞を攻撃し奏効するほど高い濃度の薬剤を投入すると、免疫の負のフィードバックが出現してしまうためである。CBT005はキャンバスのがん免疫に関する知見の結晶とも言えよう。

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