3月26日妥当レンジ 24,400円~26,400円
経済回復を視野に底固めの時間

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<NYダウ工業株は過去最高値を更新>

■先週は、週の前半はFRBがSLR(補完的レバレッジ比率)規制の条件緩和措置を3月末で打ち切ったことや、欧州での新型コロナの再拡大を受けて日米ともに株価は大きく下落したが、後半はバイデン大統領がワクチンを4月末までに2億回の接種を目指すと表明したことを受けて、経済回復期待の高まりから株価は反発した。米長期金利の上昇も一服したこともあり、NYダウは26日に3月17日以来となる過去最高値を更新した。
■22日に米主要メディアは、バイデン政権が総額3兆ドルに及ぶ経済対策を近く推進する見通しであることを報じた。総額3兆ドルのうち1兆ドル程度が道路や鉄道、港湾、EV向け設備、送電網の改善などインフラ整備に充てる模様である。財源には法人税や企業の海外収益に対する課税強化を想定していると見られる。こうした経済対策は回復を加速化させると考えられる一方で、インフレ懸念や増税による企業収益の悪化を孕む。25日にパウエルFRB議長が緩和縮小に関して言及したこともあり、米長期金利の上昇には今後も注意を払うべきと思われる。
■今週は、4月1日のISM製造業景気指数(3月)、2日に米雇用統計(3月)の発表が予定されており、2月からの改善が見込まれる。米雇用統計の非農業部門雇用者数は2月の37.9万人増から70万人増と大幅な増加が予想されている。こうした経済指標の改善をそのまま経済回復として評価するか、インフレ懸念として警戒するかは市場のセンチメントによって好悪どちらにも反応する可能性が考えられる。
■ブラジルをはじめとした中南米や欧州での新型コロナウイルスの拡大、中国と欧米諸国との対立が一段と深まっていること、混迷するミャンマー情勢など懸念材料も多く存在する。また、29日に野村HDが米投資会社アルケゴスに絡む損失(約2200億円)を発表、同日にクレディ・スイスも損失計上(30~40億ドル?)の可能性を発表した。他の金融機関にも波及する可能性もあり、波乱要因となることも考えられる。
■いずれにしても、新年度を視野にアナリスト・コンセンサス予想のプラストレンドは続いており、下落局面は押し目買いのポイントという見解は変わらない。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

24,400円~26,400 (前回24,500円~26,400円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月26日)

今期予想EPS 1340.19 (前週1328.87円)
来期予想EPS 1475.91 (前週1472.65円)
再来期予想EPS 1598.87 (前週1596.66円)
今期予想PER 21.77 (前週22.42倍)
来期予想PER 19.77 (前週20.23倍)
再来期予想PER 18.25 (前週18.66倍)
来期予想PBR 1.29 (前週1.31倍)
来期予想ROE 6.52% 前週 6.47%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.93% (前週 5.81%)

3月26日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(3/26現在)は 28,700円(前週比+0円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は30,400円(前週比▲50円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 75.260.459.1%→51.6%→68.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、68.859.1%→63.760.063.9
コンセンサス予想EPS(プラス比率)の前週比は、再び高水準に。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。