11月16日妥当レンジ 21,400円~23,100円
英ブレグジットの行方とG20首脳会議を控え、買い手不在
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米国経済に黄色信号が点りはじめた>
■米国株式市場が軟調だ。GAFAに代表されるハイテク・プラットフォーム関連の成長鈍化観測に加えて、住宅販売の不振が強まっている。9月の新築一戸建て販売件数は4ヵ月連続、中古住宅販売件数は6ヵ月連続で前月比マイナスとなった。米中貿易摩擦の影響も顕在化しつつあり、こうした変調にFRBは一時的に利上げを見送るという見方も台頭している。米10年国債利回りは、3.236%(11/8)から3.068%(11/19)へと低下。ドル円は米中貿易戦争や英ブレグジットなどリスク増大から114円から112.5円へと円高に振れている。
■東アジア首脳会議(11/15)、アジア太平洋経済協力会議(11/17-18)における米中は互いを強く批難する激しい応酬を繰り広げた。14日に米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障再考委員会」が発表した報告書では、安全保障、北朝鮮非核化、経済、貿易・投資に亙って、中国のリスクを指摘するものであった。対中強行姿勢は、トランプ氏個人ではなく、米国全体の意思であることが新ためて確認できる。
■30日(~12/1)開催の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせてトランプ大統領と習近平国家主席との会談が予定されている。中国は米国が5月に示した8項目の要求に対して142項目の貿易改善策を提示したと伝えられているが、単純に合意に至るとは考え難い。英ブレグジットも緊迫感を増しており、今週は、英メイ首相への保守党党首としての不信任投票実施の可能性もある。株式市場は不透明なイベントを控えて、買い手不在の中で、売り方優勢の状態が続きそうだ。
<「コンセンサスDI」 は4週連続で全期間50%割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、4週連続で全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、4週連続で全期間で50%割れだった。
■国内経済はマイナスだった7-9月の反動から10-12月はプラスとなることから一時的に株価が浮上する可能性もある。しかし、コンセンサス予想は再来期ベースの下方トレンドが強く、底値を伺うにはまだ時期早々。前回同様、(少なくとも)来年春頃までは、底値を模索する展開が続くと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
21,400円~23,100円 | (前回21,900円~23,600円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月16日)
今期予想EPS | 1394.62円 | (前週 1399.43円) |
来期予想EPS | 1559.95円 | (前週 1564.19円) |
再来期予想EPS | 1600.92円 | (前週 1608.46円) |
今期予想PER | 15.55倍 | (前週 15.90倍) |
来期予想PER | 13.90倍 | (前週 14.22倍) |
再来期予想PER | 13.54倍 | (前週 13.83倍) |
来期予想PBR | 1.08倍 | (前週 1.11倍) |
来期予想ROE | 7.75% | (前週 7.77%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.48% | (前週 7.43%) |
11月16日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
10月26日安値(20,971円)を目先の下値目処としたもみ合いか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.9%→49.5%→38.3%→44.1%→42.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.3%→45.2%→42.4%→43.9%→38.0%。
4週連続で50%割れ。下方トレンド一段と鮮明に。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |