6月1日妥当レンジ 23,100円~25,000円
通商摩擦は激化、日本の立ち位置が問われつつある

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米vs中国に加えて、米vsEU・カナダ・メキシコも熾烈化>

■12日に米朝首脳会談が再設定されたが、トランプ大統領は「(非核化交渉の)始まりだ」として、今後複数回の交渉を経るものと考えられ、緊迫感は後退しました。
■イタリアでの組閣成立、スペインでのラホイ首相に対する不信任案成立とサンチェス新首相の就任によって、両国の混乱は一時的には終結した。
■トランプ米政権は、欧州連合(EU)やカナダ、メキシコへの鉄鋼とアルミニウムに追加関税を発動(6/1より)。EUは対抗手段として世界貿易機構(WTO)での紛争処理手続きに入ると同時に、20日にも米国に約28億ユーロの追加関税を課す方針を表明。31~2日に開催されたG7(財務相・中央銀行総裁会議)において議長国カナダが「全員一致の懸念や失望を抱いた」とする異例の議長声明を出し、米国への非難が強まっている。
■1日発表の5月の米雇用統計、ISM製造業PMIは市場予想を上回り好調。12-13日開催予定の米FOMCでは追加利上げが見込まれている。
■スペイン、イタリアの政治情勢がひとまず落ち着いたことや、米朝首脳会談開催が確定したこと、米国経済指標の好調からNY株式市場は上昇、4日にNASDAQ指数は過去最高値を記録した。日本株市場は、円安などの支援材料があるにもかかわらず、貿易摩擦問題、国内政治の混迷と家計調査や消費動向指数の不振から伸び悩んでいる。日本株は引き続き割安感は強いものの、米利上げは2019年にも終了するとの見方も強まっており、円の先安感は弱い。
■今週は、日米首脳会談(ワシントン・7日)、G7首脳会議が会談(8~9日)が予定されている。G7では米国と欧州及びカナダとの軋轢が深まる可能性の中で、日本の対応が注目される。
■6月1日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間で前週比プラス。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)は引き続きプラス企業が50%以上を占めているものの、鈍化傾向が鮮明。日本株の割安感は依然として強いだけに反騰の機会を窺う展開が続く。今後は内需系の経済指標が重視される可能性も。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,100円~25,000 (前回23,100円~25,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月1日)

今期予想EPS 1365.67 (前週 1363.96円)
来期予想EPS 1579.95 (前週 1568.93円)
再来期予想EPS 1625.58 (前週 1617.12円)
今期予想PER 16.23 (前週 16.46倍)
来期予想PER 14.03 (前週 14.31倍)
再来期予想PER 13.64 (前週 13.88倍)
来期予想PBR 1.16 (前週 1.17倍)
来期予想ROE 8.26% 前週 8.18%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.88% (前週 7.78%)

6月1日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出




図1配当利回りは回復途上。米長期金利も3%程度に留まるなら日本の低金利はまだまだ続きそう。

 


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.969.559.3%→54.1%→53.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.7%→63.061.562.451.4%。
前週に比べてちょっと失速した感はあるが、50%をキープ。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。