日経平均回復、株式相場が戻った理由
日経平均株価は今週、13日に3万8000円台を回復した。トランプ政権の相互関税の発表から1ヶ月半、この間、マーケットは記録的な大変動に見舞われたが、すべて下げを取り戻した。
なぜ株式相場は戻ったのか。いくつか要因があるが市場がトランプ関税の限界を見切り始めたということがいちばんの理由だろう。
相互関税の発表から1週後に関税は発動されたが、その4月9日の日本時間の昼に、ドル・米国債・米国株(先物)が同時に売られるトリプル安が起きた。トランプ政権が関税の90日間猶予を発表したのは、その直後であった。その後も、トランプ氏のパウエル議長解任の意向を受けて、ドル不信から市場の混乱が続くと、パウエル議長の解任を取り下げる発言となった。これで市場は米国債やドルが売られたりするのをトランプ政権は看過できないということを知ったのだ。
この点については想定通りの展開である。
問題はここから先はどうなるか。日経平均は4万円台回復を目指して上昇基調が続くのだろうか。結論から先に言えば、日本株相場の戻りも、目先はここまでだろう。
需給面、ファンダメンタルズ面、バリュエーション面からみる株価
3万8000円は日経平均が2024年下半期から半年にわたってもみあってきたレンジの下値に当たる。相場がいったん下に抜け、その後の反騰局面ではそれまでの下値が、今度は上値の重石となることが多い。というのは、もみ合ってきたレンジでは投資家のポジションが累積してたまっているからだ。実際、価格帯別に累積売買代金を見ると、3万8000円台のそれが最も多く、ここを抜けるのは簡単ではないだろう。さらなるアップサイドには強力な材料が必要だ。その本命は、米中協議だったが、双方115%の関税引き下げというポジティブ・サプライズとなった。それを受けての3万8000円台回復である。今後、これ以上インパクトのあるプラス材料はそうそうない。
ファンダメンタルズ面からも、株価はいいところに来ている。従前から日経平均の理論株価を示してきた。日経平均を構成する225社全体の予想EPS(1株当たり純利益)を10年債利回りにリスクプレミアム5%を上乗せした資本コストで割り引いたものを理論株価としている。期待成長率は0%の仮定である。
2024年秋以降、金利上昇を背景として理論値が右肩下がりとなり、2025年年初からは実際の株価も上値の重さが目立ち始め、そして3月には持ち合いの下限であった3万8000円を割り込んだ。ここまでは実際の株価は理論値に沿った動きをしていたが、4月のトランプ関税発動以降、実際の株価が急落する中、理論値は上昇した。これは市場が大幅減益を織り込みにいっているため「見かけのEPS」で理論値を計算するのが大幅に不適合になったからである。加えて経済悪化の懸念から債券利回りが大きく下がったためである。
ところが足元では再び金利が上昇し、決算一巡後、予想EPSもとりあえずは開示されている。それらをもとにすれば理論値は3万6000円だ。
株価を決める要因である金利と業績のどちらもネガティブな動きをしている ‐ 金利は上がり、EPSは低下している ‐ のだから妥当な値だろう。
シンプルな話、日経平均のPER(株価収益率)は16倍台にまで上昇している。これは2024年年初からの平均15.8倍を上回る。
2024年夏の「令和のブラックマンデー」から回復した後も、PER16倍で頭打ちとなった経緯がある。
需給面、ファンダメンタルズ面、バリュエーション面からみて、今後は現状水準でのもみ合いに移行するのではないかと考えられる。