逆オイルショック? トランプ氏中東歴訪の深謀遠慮
【ストラテジーブレティン(379号)】
(1) サウジとトランプ氏は逆オイルショックを引き起こすのか
トランプ氏の政権復帰後初の外遊である中東歴訪は、多くの専門家にとっても異例ずくめであった。そもそも外交課題山積の中でなぜ、いの一番に中東訪問なのか、またサウジ、カタール、UAEの産油国3か国のみであり最大同盟国のイスラエルをスキップしたのはなぜか。ここ数年シェール革命により米国が世界最大の産油国になったこと、グリーンエネルギーシフトの進展等により、もはや中東の地政学的重要性は大きく低下したと考えられていた。また米国にとっての最重要の中東問題はガザをめぐるイスラエル・ハマス戦争と考えられていた。その矢先のイスラエル抜きの歴訪をどう読み解くのか。専門外ではあっても武者リサーチもこの重要性を考えざるを得ない。
需要低迷下でのOPEC石油増産、逆オイルショックの可能性?
この中東歴訪に先立つ5月3日にサウジが主導するOPECプラスは大幅原油増産を決めた。世界経済が減速懸念を強める中での増産は、米国の要請にこたえたものであったと日経新聞コメンテイターの松尾氏は指摘する。「トランプ氏はインフレ抑制を目的に原油・天然ガス増産の旗を振る。OPECにも増産を求めてきた。サウジは脱石油依存の経済構造改革に巨額の資金を必要とする。原油価格が下がれば歳入は一段と厳しくなる。それでも身を切って増産要求にこたえたサウジの判断はカタールが検討する大統領専用機よりはるかに効果的な贈り物だ」。その見返りとして、米国はサウジに対して原子力技術供与を検討しているのではないか、と松尾氏は想定する。「(これまで米国はサウジに対する原子力)技術供与はイスラエルとの国交樹立を条件としてきたが、トランプ氏の訪問直前にこの条件を取り下げたと報じられた」(日経新聞5月22日Deep Insight 松尾 博文氏)と指摘している。松尾氏はまた同コラムで、「サウジの増産決断で過去には逆オイルショックが起きた」と述べ、情勢の意味深さを示唆している。
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