10月2日妥当レンジ 17,100円~18,400円
センチメントは短期的には急回復
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米雇用統計が市場予想を大きく下回る>
■2日発表となった9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加が14.2万人と市場予想の20.3万人を大きく下回った。5日に発表された9月のISM非製造業総合景況指数も前月の59.0から56.9に低下、市場予想の57.5を下回った。
■雇用統計発表を受けて、FRBによる利上げは2016年の初頭まで先送りされるとの観測が広がり、NY株式をはじめ世界の株式の上昇に繋がっている。また、ロシアのノバク・エネルギー相が3日に、OPEC加盟国や非加盟の産油国と原油市場について協議する用意があると表明したことを受けて商品相場も押し上げられ、石油・資源関連株の上昇を促している。
■日本国内では、8月の鉱工業生産指数が97.0に低下したことや日銀短観における景況感の悪化を受けて、日銀の追加緩和期待が強まっている。金融政策決定会合は、この10月は6~7日と30日に予定されており、緩和期待を背景にした株価上昇の可能性が強まっている。
■12カ国閣僚会議でTPPが合意に達するとともにノーベル医学・生理学賞での日本人の受賞などセンチメントを好転させる事象も生じており、短期的には強い株価リバウンドが生じる可能性も考えられる。
■しかしながら、企業業績見通し(アナリストコンセンサス)の低下トレンドは依然として継続しており、追加緩和期待が剥落した場合には大きく反落するリスクが強いことには留意すべきである。
<コンセンサス予想EPSは6週連続で来期・再来期がマイナス>
■2日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今回も全期間において前週比マイナスとなった。前週比プラス企業数の割合は来期予想ベースで40.8%、再来期予想ベースで32.3%、と低空飛行が続いている。
■日経平均は、10月1日に2銘柄の入替えとなったが、コンセンサス予想EPSへの影響は、今期-0.14円、来期+0.74円、再来期+0.94円と試算される(来期・再来期はプラス効果があったにもかかわらず前週比マイナスであった)。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
17,100円~18,400円 | (前回17,300円~18,650円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月2日)
今期予想EPS | 1056.47円 | (前週 1057.13円) |
来期予想EPS | 1139.68円 | (前週 1142.33円) |
再来期予想EPS | 1243.94円 | (前週 1245.83円) |
今期予想PER | 16.78倍 | (前週 16.91倍) |
来期予想PER | 15.55倍 | (前週 15.65倍) |
再来期予想PER | 14.25倍 | (前週 14.35倍) |
来期予想PBR | 1.14倍 | (前週 1.16倍) |
来期予想ROE | 7.33% | (前週 7.40%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.74% | (前週 6.77%) |
*10月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
レンジは予想EPSの減少を受けて下向きであるが、センチメントは急回復か。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.7%→36.9%→37.0%→34.4%→40.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.1%→41.4%→38.0%→32.7%→32.3%。
予想EPSの下方トレンドは変わらず。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
期待収益率ではまだ割安感はないが、緩和期待から長期金利が低下していることによってインプライド・リスク・プレミアムの低下は抑制されている(平均的な水準?)
配当利回りは株価下落等から2013年~2014年前半の水準に回復。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |