7月10日妥当レンジ 18,700円~20,150円
海外市場好転も支えに底堅い動きだが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ユーロ圏諸国とギリシャが条件付き合意に>
■13日にユーロ圏19カ国とギリシャは、金融支援の再開について条件付きで合意した。ギリシャは15日までに増税や年金改革など財政改革法案を議会で妥結する必要がある。年金改革はチプラス首相のこれまでの方針からは大きな転換となるため難航が予想される点には一定の注意が必要と思われる。
■暴落していた中国株式市場の底打ち感、ギリシャ債務問題に一応の終結が見えてきたこと、欧米株式市場の回復などから日本株市場も先週の下落を一気に埋め底堅い展開が続いている。ただし、高値を更新してゆくにはやや材料不足であり、暫くは、日経平均株価は20,000円と6月高値20,952円を挟んだボックス圏の動きになると考えている。
■日本株上昇の条件としては、1)企業業績見通しの上方へのシフト、2)ROEの改善、3)国内・海外景気指標の改善、4)更なる金融緩和、のいずれか(または複数)の条件が必要になると考える。7月下旬から本格化する4-6月期決算は好調と思われるが通期見通しを大きく上方に持ち上げるには限定的と考えられる。ROE改善には増配など配当性向の改善が求められるが、企業が増配の決定を行うのは期末近くであり、年内のアクションは限定的。国内経済は緩やかな回復傾向にあるものの、まだ不透明感が残る。米利上げが示唆される状況で日銀の金融緩和の可能性は低いと考える。バリュエーション面では割安感に乏しいことを考えると、通期業績の上方修正期待が台頭する秋口(10月以降)までは高値を更新する要素は少ないと考える。
■ボックス圏の動きの中で、個別銘柄の選別が強まると考えるが、低位株・割安株・小型株への物色が高まると思われる。

 

<コンセンサス予想EPSは来期・再来期がプラス>
■10日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースはマイナスであったものの、来期・再来期はプラスであった。日経新聞から得ているBPS(1株純資産)の計算値上昇から予想ROEが低下したため、今回は妥当レンジを引き下げる(一時的な要因の可能性もある)。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,700円~20,150円 (前回 19,150円~20,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月10日)

今期予想EPS 1056.89 (前週 1057.02円)
来期予想EPS 1169.66 (前週 1167.75円)
再来期予想EPS 1268.29 (前週 1263.75円)
今期予想PER 18.72 (前週 19.43倍)
来期予想PER 16.91 (前週 17.59倍)
再来期予想PER 15.60 (前週 16.25倍)
来期予想PBR 1.27 (前週 1.33倍)
来期予想ROE 7.53% 前週 7.56%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.61% (前週 6.52%)

*7月10日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1
 7/14(火)現在では妥当レンジ上限よりの上方に日経平均がある。短期的なリバウンドは織り込んだか?

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、65.1%→64.7%→59.1%→59.8%→57.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.6%→56.1%→53.8%→56.8%→51.9

来期ベースではプラス比率を堅持しており、株価の上昇基調は変わらない。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。