5月22日妥当レンジ 19,050円~20,550円
“まだ”は“もう”、それとも“もう” は“まだ”?

2015/05/26

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<経済指標にポジティブに反応>
■5月20日に発表された1-3月期のGDPは前期比+0.6%と市場予想を上回った(ただし、在庫の寄与分は下方修正されるとの見方もある)。4月の小売売上高は、百貨店、スーパー、コンビニといずれも高い伸びを示した(こちらも前年には消費増税後の反動があるため単純に評価できない)。25日発表の貿易統計も収支は再び赤字になったものの534億円と限定的であり、輸出が数量ベースでも+1.8%と伸びた。
■輸出が特に米国向けで自動車や半導体等電子部品が好調であることを除けば、全面的に回帰回復を示唆する内容ではないにも関わらず、ポジティブな面をマーケットは捉える傾向が強まっている。
■22日にFRBのイエレン議長が「景気が想定通りに回復するなら、年内のある時点で利上げの最初の段階に進むのが適切である」 と市場の加熱に警鐘を鳴らしたように世界的な金融緩和から過剰流動性に陥りつつあることが懸念される。

 

<日経平均の割安感はほぼ無くなりつつある>
■22日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期ベースが小幅に増加し、再来期ベースが小幅に減少した(前週のデータに修正あり)。前週比EPSがプラスとなった企業数は引き続き過半数を占めているものの、鈍化傾向が見て取れる。ひとまずは対象決算期移行によるプラス変化は終息しつつあると言える。
■今回は日経平均の妥当レンジを若干引き下げる。計算上の1株当り純資産の増加から予想ROEが低下したこと(一時的なトラックエラー?)、長期金利の上昇が理由である。
■現在の株価はレンジ上限にかなり近づいており割安感はかなり薄らいでいる。強気をサポートするだけの経済環境には国内・海外ともにあるとは言い難い。ただし、マーケットセンチメントは依然として強気であり、レンジ上限を超える展開も考えられる。その場合でも警戒感を持って深追いしないことをお奨めしたい。29日に有効求人倍率・失業率、消費者物価指数等の発表がある。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,050円~20,550円 (前回 19,150円~20,650円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月22日)

今期予想EPS 1036.00 (前週 1033.75円)
来期予想EPS 1156.03 (前週 1153.57円)
再来期予想EPS 1243.85 (前週 1248.00円)
今期予想PER 19.56 (前週 19.09倍)
来期予想PER 17.53 (前週 17.11倍)
再来期予想PER 16.29 (前週 15.81倍)
来期予想PBR 1.32 (前週 1.33倍)
来期予想ROE 7.54% 前週 7.77%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.58% (前週 6.80%)

*5月22日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

妥当レンジは実績BPSの増加と長期金利の上昇から下方にシフト。予想EPSの増加も緩慢になってきた。モメンタムでは上昇トレンドであるが、水準的にはやや注意が必要かも。

 

 

 図2いずれも3月最終週と5月中旬との比較。
2015年は最終的にはほぼ従前(3月末時点)の市場予想のEPS水準を確保。


決算発表前の「来期」は発表後の「今期」(同様に発表前の「再来期」は発表後の「来期」)である。発表前に対する発表後の進捗率は、前年をやや下回る水準。

 

 図3 
原データ(日経新聞のPBR)からの逆算で1株当り純資産が急増。その結果、予想ROEの低下と期待収益率及びインプライド・リスク・プレミアムの低下が生じている。一時的なトラックエラーなのか?(そうでなければやや警戒水準)

 

図4    
来期予想ベースのプラス企業比率は、51.4%→71.8%→61.9%→74.1%→55.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.9%→65.3%→59.5%→64.0%→52.4%。
予想EPS増加トレンドも終息か。
 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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