4月4日妥当レンジ 14,100円~16,350円
ECBの量的緩和の可能性に揺れる
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米国経済指標は堅調であったが>
■先週発表された米国経済指標は、市場予想をいずれもやや下回る水準であったものの堅調な内容であった。4日発表の米雇用統計は、3月の非農業部門雇用者数の増加が19.2万人増と市場予想(20.0万人増)を下回ったが、2月分が17.5万人から19.7万人へと上方修正された。
■4日のECB理事会では金融緩和は見送られたものの、会議後の記者会見でドラギ総裁が「低インフレが過度に長期間続くようなら、資産買い入れを検討することで理事会は一致している」と語った。ユーロ圏の消費者物価上昇率は昨年10月から1%を下回って推移しており、デフレが懸念されている。欧州が量的緩和に向うのであれば、日本はさらに大きな量的緩和を求められる可能性が生じてくるだけに要注意である。
■国内においては4月1日から消費税率が8%に引き上げられた。3月の消費者物価はコアで1.3%と上昇し、4月もやや高めを維持すると見られている。景気減速懸念は依然として残るだろう。
■日本株は先週末のNY市場の下落を受けて7日には大幅な下落となった。米企業の1Q決算見通しに懸念が広がっており目先調整気味。基本的には押し目買いのスタンスであるものの、一旦は織り込んだとは言え中国、ウクライナなど不確定要素がなくなったわけでは無い。神経質な展開が続きそうだ。
<日本株が上がらない単純な理由>
■4月4日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、全ての対象期間において前週比でマイナスとなった。特に、来期、再来期のマイナス幅が大きい。これはウエイトの高いソフトバンク(9984)、KDDI(9433)など通信セクターのマイナスが影響した。
■先週も申し上げたが、現状の株価水準は対象決算期の移行を考慮すれば割高ではない。しかし、強気になるほどにはファンダメンタルの業績変化率は小さい。2013年は何故、5月以降に株価が上昇しなかったのかを含めて、次頁以降に説明する
◇日経平均妥当水準(レンジ)
14,100円~16,350円 | (前回 13,950円~16,200円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月4日)
今期予想EPS | 766.83円 | (前週 767.79円) |
来期予想EPS | 891.91円 | (前週 893.84円) |
再来期予想EPS | 988.34円 | (前週 993.27円) |
今期予想PER | 19.64倍 | (前週 19.14倍) |
来期予想PER | 16.89倍 | (前週 16.44倍) |
再来期予想PER | 15.24倍 | (前週 14.80倍) |
来期予想PBR | 1.31倍 | (前週 1.28倍) |
来期予想ROE | 7.73% | (前週 7.77%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.55% | (前週 6.64%) |
*4月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日経平均が上昇しない理由は、割安感があまり無く、予想EPSが上昇しないから!
妥当レンジはほぼ中位にある。上にも下にも振れる可能性はある。
前々回から始めた12ヵ月移動平均の妥当レンジ(下限)と4日時点の日経平均株価はほぼ同じ位置にある。月曜日(7日)に下落したことを考慮すれば押し目買いの水準に入っていると考えられるだろう。
昨年、一昨年の同時期と比較して、前週比プラス企業の比率が低い水準にあることが気掛かり。変化率は小さくなっている。
日経平均EPSはコンセンサス、TOPIXは日経新聞から算出(いずれも今期予想ベース)、2012年年初を100として指数化した。
ここ最近はTOPIXの方が好調であるにも関わらず、NT倍率が上昇している(NT倍率は今後縮小する方向に向かうと考える)。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |