1月21日妥当レンジ 28,450円~30,735円
ウクライナ情勢緊迫化・FOMC通過後も不安定な商状続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<市場は楽観と悲観が交錯する波乱状態>
■今朝(25日)目覚めてから米国株市場を見て驚かれた方が殆どだったのではないだろうか?一体何が起こったのかと。NYダウ工業株は一時1,000ドル超の下落であったのに99ドルのプラスで終わっていた。反転した明確な理由はない。株価バリュエーションが新型コロナ禍初期の水準にまで低下したこと、テクニカル指標で売られ過ぎのシグナルが出ていたこと、暗号資産の価格が先行して戻ったことなどが指摘されるにとどまっている。
■戻った理由は不明であるが、下げた理由は明確である。1)25-26日の米FOMCにおいて金融引き締めの加速の可能性が懸念されている。2)利上げが確実な一方で、米景気減速の可能性が強く示唆されていること。24日にIHSマークイットが発表した1月の米購買担当者景気指数(PMI)が急落したことも引き金であった。3)ウクライナ情勢の緊迫が高まっている。ロシアはウクライナとの国境付近に10万人規模の軍部隊を展開しており、侵攻は近いとされる。23日に米国務省は在ウクライナ大使館職員の家族の国外退避命令を出すとともに、24日に米防衛省はウクライナ周辺の東欧地域に8,500人規模の米軍を派遣する準備に入ったこと明らかにした。5)原油価格の上昇基調が続いている。原油需要に対してOPECプラスの増産は緩慢であり、産油国でのテロなどから需給が一段とタイトになる可能性も強い。
■今週は、25日:米コンファレンスボード消費、26日:米新築住宅販売件数、27日:10-12月米GDP速報、などが予定されているが、まずは25-26日のFOMCに注目が集まるだろう。FOMCでは金融引き締めの加速が行われなかったとしても(短期的には株価が反騰すると思われるが)株価の上値は重い商状が続くと考えられる。なぜなら市場が懸念しているのは既に金利と株価バリュエーションという単純な問題ではなく、世界景気がスタグフレーション(不況下の物価上昇)に向かっている可能性に対する懸念であるからだ。
■コンセンサスDI(前週と比較した予想EPSのプラス比率)もこの数週間50%前後で推移している。今週から本格化する決算発表がさらなる懸念を生じさせる可能性も留意したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
28,450円~30,735円 | (前回28,738円~31,055円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月21日)
今期予想EPS | 1649.77円 | (前週1646.15円) |
来期予想EPS | 1785.72円 | (前週1781.01円) |
再来期予想EPS | 1881.12円 | (前週1876.62円) |
今期予想PER | 16.68倍 | (前週17.08倍) |
来期予想PER | 15.41倍 | (前週15.79倍) |
再来期予想PER | 14.63倍 | (前週14.99倍) |
来期予想PBR | 1.18倍 | (前週1.21倍) |
来期予想ROE | 7.68% | (前週 7.68%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.12% | (前週 7.05%) |
1月21日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
ウクライナ情勢の緊迫化と米金融引き締めへの懸念からしばらくは妥当レンジを下回る株価推移が予想される。問題は妥当レンジそのもの(=企業業績見通し)が維持されるかに今後は焦点が移りそうだ。オミクロンは欧米では20日前後にピークを越えた様相にあり、景気回復とインフレとの綱引きが今後は焦点になるだろう。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.2%→51.6%→39.1%→59.6%→50.5%→50.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.9%→54.8%→31.7%→52.7%→46.4%→49.2%。
来期ベースも、再来期ベースも50%付近で推移。下降トレンドに入るのか?
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |