12月11日妥当レンジ 21,400円~23,200円
テールリスク(大統領選の決着とブレグジッドの行方)
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<円高でも株価上昇は果たして生じるのか?>
■先週の株価は、NY市場でも東京市場でも高値圏における上下動に終始した。注目のECB理事会(10日)においては市場の予測どおりに資産購入の特別枠(PEPP)を1兆3,500億ユーロから1兆8,500億ユーロに上積みすると同時に購入期限も21年6月末から22年3月末に延長された。
■この決定を受けてユーロは対ドルで上昇した。金融緩和は一般的には通貨の下落を齎すが、事前に織り込まれていたことや、翌週の米FOMC(15-16日)での追加緩和に投資家の意識が向かったことなどが要因として考えられるだろう。FOMCでは、「資産の購入ペースの増額」あるいは「購入国債の年限長期化」が採用される可能性が指摘されている。
■17-18日には日銀も金融政策決定会合を予定しているが、現状では政策変更は見込まれてはいない。そのため、欧米が追加緩和に向かう中で、円高が進行する可能性もある。ただし、円高に対しては、企業のサプライチェーンの見直しによって円高耐性が強化されている。加えて世界的な金利低下によって「円キャリートレード」が減少したことで、トレード解消による急激な円高は生じにくいとの見方が強い。
■昨日発表された日銀短観では大企業製造業の業況判断指数が大幅に改善した。コロナ禍の影響が強いサービス業でも持ち直しの動きにある。しかし、同日に政府は「GO TO トラベル」を全国一斉に一時停止にすると発表しており、関連産業への影響が懸念される。
<市場はテールリスクを軽視しすぎでは?>
■米大統領選挙における選挙人による投票が昨日行われた。バイデン新大統領の確定をメディアは報じているものの、投票結果が正式に公表されたわけではなく、トランプ氏による強硬手段の発動の可能性はゼロではない。欧州と英国の通商協議は期限であった13日以降も継続されることになったが、打開策が見えているわけではなく、年末まではあと僅か半月である。米大統領選挙前に比べて世界の株価水準は大きく跳ね上がっている。可能性は僅少でも影響が甚大なリスクに対して市場はやや楽観的過ぎるのように思われてならない。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
21,400円~23,200円 | (前回21,200円~22,900円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月11日)
今期予想EPS | 1085.34円 | (前週1086.68円) |
来期予想EPS | 1302.03円 | (前週1298.97円) |
再来期予想EPS | 1489.19円 | (前週1484.81円) |
今期予想PER | 24.56倍 | (前週24.62倍) |
来期予想PER | 20.47倍 | (前週20.59倍) |
再来期予想PER | 17.90倍 | (前週18.02倍) |
来期予想PBR | 1.16倍 | (前週1.15倍) |
来期予想ROE | 5.66% | (前週 5.58%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.32% | (前週 5.25%) |
12月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(12/11現在)は 25,200円(前週比+200円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は26,550円。コンセンサス予想がさらに上方シフトする可能性を市場は見ているのかもしれない。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.0%→56.8%→58.7%→57.3%→57.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、64.6%→59.4%→63.4%→55.3%→61.9%。
6週連続で全期間50%超、来期ベースでは10週連続。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |