ローマ教皇の逝去
◆先月プライベートでイタリアを旅行した。今年は25年に一度のジュビレオ(Giubileo、聖年)の年に当たり、「聖なる扉 (Porta Santa)」が開かれる。4大バジリカにある「聖なる扉」を4つくぐることによって罪が赦されると言われており、多くの巡礼者がローマを訪れる。僕も赦しを請うため「聖なる扉」をくぐりに出かけたのである。僕がバチカンを訪れた時、ローマ教皇は病床に臥せっておられたが、サンピエトロ広場のミサで教皇からの音声メッセージを聴くことができた。
◆フランシスコ・ローマ教皇が亡くなった。教皇は格差の解消を訴え、貧しい人々の救済にあたるなど弱者に寄り添ってきた。メキシコとの「国境の壁」建設を推進するトランプ大統領について「壁を築くことしか考えず、橋を架けることを考えない人間はキリスト教徒ではない」と批判したこともあった。教皇の前ではトランプ政権の行いはすべて「まやかし」に見える。典型例はバンス副大統領が用いた「ordo amoris(オルド・アモリス)」という言葉だ。聖アウグスティヌスやトマス・アクィナスによって発展された神学的思想で、「愛の秩序」や「愛の優先順位」を意味する言葉である。
◆バンス副大統領はこの言葉を用いて、「まず家族、次に隣人、そして国家の同胞を優先的に愛すべきであり、それが他国の人々よりも先である」と主張した。明らかにトランプ大統領の移民政策や保護主義を正当化するための詭弁である。ローマ教皇はバンス氏の解釈をきっぱりと否定した。教皇は、「キリスト教の愛は、徐々に他者へと広がる自己中心的な関心の拡張ではない」と述べ、真の「ordo amoris」は、すべての人に開かれた兄弟愛を築くものであると強調したのである。そのバンス氏が、教皇と面会した最後の要人となったことは皮肉である。
◆バチカンのサンピエトロ広場で執り行われたフランシスコ教皇の葬儀にはおよそ50人の国家元首が集った。トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談も実現した。米政府高官からは生産的な話し合いだったとのコメントが出されている。ゼレンスキー大統領も「成果をあげることができれば歴史的な会談となり得る」と述べた。教皇の葬儀が機会を与えた歴史的会談が和平へ前進する契機となれば教皇にとっての大きな献花となるだろう。
◆教皇の遺体は、サンピエトロ大聖堂ではなくサンタマリア・マジョーレ教会に埋葬された。僕はバチカンで買ったロザリロをサンタマリア・マジョーレ教会の「聖なる扉」にこすりつけてきた。おまけに教会内にあった聖水もふりかけた。これでご利益が、いや、神のご加護がありますように、と考えたのだが、そんな邪な考えは教皇に叱られそうである。教皇の棺は質素な木の棺であった。最後まで清貧を旨とした真の聖者であられた証である。
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