2018年の日本経済は、かなり明るい見込み

2018/01/12 <>

(要旨)
■景気は自分では方向を変えない
■海外には景気を腰折れさせる要因は見当たらず
■国内にも景気を腰折れさせる要因は見当たらず
■長いタイムラグを経て人々の気分が明るくなった模様
■バブル崩壊後の諸問題が一気に解決するかも

(本文)
■景気は自分では方向を変えない
景気を考える際に、最も重要な事は、景気は自分では方向を変えない、という事である。経済学の教科書には在庫循環や設備投資循環などと記されているが、今では製造業が経済に占めるウエイトが下がり、在庫管理技術も進歩しているし、コンピューターのような更新投資のタイミングが普通の設備機械よりはるかに短いものも多いので、実際にそうした循環が生じるケースは稀なのである。

景気には、一度上を向くとそのまま改善・拡大を続ける性質がある。景気が良いので物が売れる→企業が増産のために人を雇う→雇われた元失業者が物を買うので一層物が売れる、といった好循環が生まれるからである。企業が増産のための設備投資をすれば設備機械などが売れるであろう。銀行も、景気が良いと借り手が黒字になるので安心して融資をするであろう。

反対に、一度下を向くとそのまま景気が悪化していくことになりかねない。この場合は政府日銀が財政金融政策で景気の回復を図るので、遠からず景気が方向を変えるケースも多いわけだが、景気が自分で方向を変えるわけではない、という点は上むきの場合と共通である。

■海外には景気を腰折れさせる要因は見当たらず
日本経済は内需が弱いため、海外経済の変調によって輸出が減少すると、国内の景気が腰折れてしまう場合も多い。過去3回の景気後退はいずれも、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、欧州財政危機といった海外要因で輸出が減少した事によって引き起こされたものなのである。

というわけで、海外経済の担当者に聞いてみると、欧米については大きな懸念は無さそうである。そもそも中央銀行が金融緩和を正常化しつつあるわけであるから、大きな懸念材料があるとも思われない。

中国については、懸念を口にする専門家もいるが、中国は政府の力が強いので、経済が大混乱するような事はなかろうし、仮に中国の経済が若干落ち込んでも、日本経済への影響は軽微であろう。一つには、日本の対中輸出には、中国から欧米に輸出される製品に使われる心臓部の部品が大量に含まれており、その部分は中国の景気が悪化しても影響を受けないからである。

今ひとつ、米国の景気が悪化すると米国が金融緩和をすることでドル安円高となり、日本の対世界輸出に悪影響が生じかねないが、中国経済が減速して中国が金融緩和を行っても、そうした影響は生じないからである。

■国内にも景気を腰折れさせる要因は見当たらず
国内的にも、バブル崩壊で景気が腰折れしてしまうリスクは無さそうだ。ビットコインや都心の地価はバブルかも知れないが、局部的なバブルであるから、それが崩壊したとしても経済全体への影響は限定的であろう。

貸家建設もバブルかも知れないが、こちらは価格高騰バブルとは異なるので、一気に崩壊する事は無いであろうし、バブルが崩壊したとしても銀行の融資が一気に焦げ付くといった事も無いであろうから、今年の景気を考える上での懸念材料とはなり得ない。

財政金融政策も、引き締めは予想されない。消費税に関しては、来年の話であり、今年は考える必要は無いであろう。

■長いタイムラグを経て人々の気分が明るくなった模様
バブル崩壊後、日本人は経営者も投資家も消費者も、酷い目に遭い続けて来たため、少し良い事があっても「どうせ、遠からず悪い事が起きるのだろう」と考える習慣がついてしまった。これが景気にマイナスに働いて来た。「景気は気から」である。

景気が回復しても「どうせ再び悪化するだろうから、設備投資は控えよう」と考える経営者、円安になっても「どうせ再び円高になるだろうから、生産ラインを組み替えて輸出を増やすのは危険だ」と考える輸出企業、企業収益が改善しても「どうせ株価は上がらないから買うのは待とう」と考える投資家、少子高齢化で年金が心配だから消費をせずに貯蓄に励む消費者、等々が景気の回復を妨げてきたわけである。

しかし、そうした凍りついたマインドが、少しずつ融けて来た感じがする。「労働力不足は続きそうだから省力化投資は積極的に行おう」と考える経営者、「円安は続きそうだから生産ラインを組み替えて輸出を増やそう」と考えはじめた輸出企業、「日本株も持っておかないとマズイかも知れない」と考えはじめた投資家、といった所である。

消費者だけは、所得が増えても消費を増やしていないが、これも遠からず「バイトや派遣をクビになる心配も無いし、労働力不足で時給も上がっているし、倹約ばかりではなく、少しは使おう」という非正規労働者が増えてくると期待しよう。正社員は賃金が上がらないので、消費増は期待できないが(笑)。

■バブル崩壊後の諸問題が一気に解決するかも
バブル崩壊後の日本経済は、多くの深刻な問題を抱えていたが、その多くが一気に解決に向かうかも知れない。

最も深刻であった失業の問題は、すでに解決しており、労働力不足が問題となっている。仕事探しを諦めていた高齢者や短時間しか働けない子育て中の女性でさえも、仕事を見つけられるようになって来たようだ。

就職氷河期に学校を卒業したなどの理由で、正社員になれず、非正規労働者として生計を立てている「ワーキング・プア」と呼ばれる人々も、非正規労働者の需給逼迫から時給が上がり、多少はマトモな生活が出来るようになりつつある。中には正社員になれた人も少しずつだが出始めている。

ブラック企業も、存続が難しくなりつつある。これまでは、ブラック企業を退職しようとしても、「辞めたら失業者だよ」という会社側の脅しが効いたが、今では「辞めても雇ってくれる会社は簡単に見つかりますから」というわけで、ブラック企業は労働力不足に悩むようになって来たのである。労働条件を改善してホワイト企業として生き延びるか、社員の退職が相次いで消滅するか、ブラック企業に残された選択肢は二つしか無いのである。

こうして、バブル崩壊後の問題が一気に解決すれば、日本経済は「黄金時代」と呼べるような時代を迎えるかも知れない。

北朝鮮で何事も起こらなければ、という前提条件付であるが(笑)。

(1月5日発行レポートから転載)

TIW客員エコノミスト
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