日本株の業種別業績予想
市川レポート(No.509)日本株の業種別業績予想
- 主要企業の2019年3月期純利益予想は前年同期比-2.1%、円高進行などが見通しに影響。
- 機械、電気機器、卸売業、非鉄金属、小売業などは増益、輸送用機器や建設などは減益予想。
- 今期純利益は最終的に小幅増益を見込むが、実際の業績の上方修正まで、株価は伸び悩みも。
主要企業の2019年3月期純利益予想は前年同期比-2.1%、円高進行などが見通しに影響
日本では、上場企業による2018年3月期の決算発表がほぼ終了し、2019年3月期の業績予想が出そろいました。そこで今回は、東証株価指数(TOPIX)構成企業のうち、3月期決算企業を対象として、業種別に2019年3月期の業績予想をまとめました。対象項目は純利益ですが、予想を出していない企業もあるため、2018年3月期の実績値と比較可能な企業のみを選別しています。また、業種は東証33業種分類に基づきます。
以上を踏まえて集計したものが図表1です。純利益は2018年3月期の実績で、前年同期比+21.1%となりました。前期は、景気の回復の裾野が世界的に広がり、製造業を中心に業績の持ち直しがみられた結果、純利益は大幅に伸びました。一方、2019年3月期の予想は、同-2.1%となっています。今期は、米減税による増益効果の反動に加え、円高や原油高が影響し、減益見通しとなりました。
機械、電気機器、卸売業、非鉄金属、小売業などは増益、輸送用機器や建設などは減益予想
次に、業種別の動きを確認していきます。建機メーカーを含む「機械」や、半導体製造装置メーカー、電子部品メーカーを含む「電気機器」は、伸び率が低下するものの、前期に引き続き増益が予想されています。一方、自動車を含む「輸送用機器」は、前述の米減税の反動や円高進行が重しとなり、今期は減益予想となっています。「建設業」も、労務費や建材費の増加などから、今期は減益予想です。
また、資源価格の上昇が追い風になる業種として、商社を含む「卸売業」や、「非鉄金属」が挙げられます。これらも「機械」、「電気機器」と同様、伸び率は低下するものの、今期も増益が見込まれています。内需に目を向けると、ドラッグストアや百貨店を含む「小売業」や、鉄道を含む「陸運業」は、インバウンドの恩恵を受けやすく、引き続き増益が予想されています。
今期純利益は最終的に小幅増益を見込むが、実際の業績の上方修正まで、株価は伸び悩みも
主要企業の2019年3月期の純利益は、全体で減益予想となりましたが、市場が想定していた範囲内だったため、いわゆる「ガイダンスリスク(弱気の業績予想が相次ぎ株価が大きく調整するリスク)」の顕在化は避けられました。今期の純利益について、現時点における市場コンセンサスは、「当初は減益予想でも、次第に上方修正され、最終的には2%前後の増益で着地する」というものです。
弊社では、調査対象とする主要企業224社(金融を除く)の2019年3月期の業績について、純利益は前年度比+2.2%を予想しています(3月5日時点)。図表1で集計した企業とは数が異なりますが、市場コンセンサスと同様、最終的には小幅な増益に転じると見込んでいます。そのため、日本株については、実際に業績予想の上方修正が確認されるまで、やや伸び悩む時間帯が続く可能性があります。
(2018年5月23日)
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