実は好調な今年の株式市場
市川レポート(No.435)実は好調な今年の株式市場
- 日本株だけみると、投資家の慎重な様子がうかがえるが、実は今年の株式市場は世界的に好調。
- その理由は、世界経済の安定的な成長、ドル安、そして金融市場に供給され続ける過剰流動性。
- 日本株は流動性に支えられる展開が続こう、ただし、ここから一段高となるには3つの要素が必要。
日本株だけみると、投資家の慎重な様子がうかがえるが、実は今年の株式市場は世界的に好調
ドル円は、2017年1月3日に1ドル=118円60銭水準をつけた後、揉み合いながらも緩やかにドル安・円高方向へ進み、9月8日には1ドル=107円32銭水準をつけました。一方、日経平均株価は、6月から8月にかけて2万円前後でのこう着が続きましたが、円高や地政学リスクなどが嫌気され、結局その後は反落しました。そのため日本株は、企業業績は良好ながらも、上値は重いという印象が強まりました。
円相場と日本株の動きだけをみると、投資家はリスクを取るのに慎重な様子がうかがえますが、実は2017年の株式市場は世界的に好調です。昨年末から直近まで、米国、欧州、アジアなど新興国の主要株価指数は、おおむね日経平均株価を上回っています(図表1)。実際に、昨年末から直近まで、株式ファンドへの資金流出入動向をみると、先進国、新興国ともに安定した資金の流入が確認できます(図表2)。
その理由は、世界経済の安定的な成長、ドル安、そして金融市場に供給され続ける過剰流動性
世界的に株式市場が好調な要因として、「世界経済の安定的な成長」や、「ドル安」が挙げられます。特にドルは、米国が利上げ局面にあるなかでも、対主要通貨で軟調な動きが目立ちます(図表1)。これは米国で物価が伸び悩み、その結果、利上げ期待が高まらず、米長期金利が低位で推移していることによるものと思われます。ただドル安によって、相対的に新興国通貨高となり、これが新興国株上昇の一因となっています。
また、昨年末から直近まで、中央銀行のバランスシート規模の変化を日米欧で比較すると、米連邦準備制度理事会(FRB)はほぼ変わらず、欧州中央銀行(ECB)は約17%増、日銀は約8%増でした。FRBは保有証券の償還資金を再投資しているため、バランスシート規模に変化はありませんが、日米欧全体でみると、金融市場への流動性供給量は増加していることが分かります。
日本株は流動性に支えられる展開が続こう、ただし、ここから一段高となるには3つの要素が必要
つまり、今年の金融市場は、「世界経済の安定的な成長」と「ドル安」に、「流動性相場の拡大」が加わった状況にあります。一般に、このような環境では、投資家はリスクオン(選好)に傾きやすく、世界的に株価が上昇しても違和感はありません。特に過剰流動性の拡大で、金融市場には一段と流動性が積み上がり、多少の悪材料でも株価は大崩れしにくくなっています。
実際、日経平均株価は、3月中旬と8月上旬に下げ幅を拡大しましたが、その後1~2カ月程度で元の水準に戻っており、この傾向はしばらく続くと思われます。ただし、世界的に出遅れている日本株が一段高となるには、①北朝鮮情勢を巡る緊張が過度に高まらないこと、②予算審議などを含む米議会の動向がある程度見通せるようになること、③FRBがバランスシート縮小を無難に開始すること、が目先は必要と考えます。
(2017年9月19日)
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