イールドカーブの形状と景気および株価の関係
市川レポート(No.428)イールドカーブの形状と景気および株価の関係
- 米国では利上げが始まった2015年12月以降、イールドカーブの緩やかな平坦化が進行している。
- 過去、イールドカーブが逆イールドとなってから一定期間後、米国は景気後退や株安局面を迎えた。
- 今回は、巨額のバランスシートを抱えたままの異例の利上げで、逆イールドへの過度な心配は不要。
米国では利上げが始まった2015年12月以降、イールドカーブの緩やかな平坦化が進行している
今回は、利回り曲線(イールドカーブ)の形状と、景気および株価の関係について考えます。一般に、イールドカーブが右肩上がりの状態(長期金利が短期金利よりも高い順イールド)で、利上げが始まると、短期金利が上昇し、イールドカーブの平坦化が進みます。さらに利上げが続き、市場が将来の景気減速を織り込むと、長期金利が低下し、イールドカーブは右肩下がり(長期金利が短期金利よりも低い逆イールド)になります。
米国では2015年12月16日に利上げが始まりましたので、その後のイールドカーブの変化を確認してみます。利上げ時点で、2年国債利回りの水準は約1.0%、10年国債利回りは約2.3%と、順イールドの形状でした。3度の追加利上げ後、2017年8月16日時点で、2年国債利回りの水準は約1.33%、10年国債利回りは約2.22%となり、イールドカーブの形状は依然順イールドであるものの、緩やかな平坦化が進んでいます。
過去、イールドカーブが逆イールドとなってから一定期間後、米国は景気後退や株安局面を迎えた
米国において、このまま利上げが進み、イールドカーブが逆イールドとなった場合、景気や株価への影響が懸念されます。そこで、米国におけるイールドカーブの形状変化と景気循環および株価の関係について、過去の動きを検証してみます。なお、イールドカーブの形状については、便宜的に10年国債利回りから2年国債利回りを差し引いた長短金利差を用います。
景気への影響については図表1の通りです。長短金利差がマイナス、すなわち長期金利が短期金利よりも低い逆イールドが発生してから、1~2年後に景気後退となっています。株価への影響は図表2の通りです。長短金利差がマイナスとなってから、8カ月~1年10カ月後にダウ平均株価は下落トレンドを迎えています。そのため、相場をみる上では、逆イールドの形状には一定の注意が必要と思われます。
今回は、巨額のバランスシートを抱えたままの異例の利上げで、逆イールドへの過度な心配は不要
ただし、1994年2月からの利上げ局面では、逆イールドの形状はみられず、景気後退や株安にも至っていません。また、1994年2月以降、直近3回の利上げは、いずれも連続利上げでした。今回、米連邦準備制度理事会(FRB)は、巨額のバランスシートを抱えたまま、極めて緩やかなペースで利上げを行っています。これらの点を踏まえれば、今回の利上げ局面で、逆イールドを過度に心配する必要はないと思われます。
足元のフェデラルファンド(FF)金利先物市場が示唆する2018年末時点のFF金利は1.44%で、追加利上げが1回織り込まれている程度です。米10年国債利回りがここまで低下すれば逆イールドになりますが、そのような場合、追加利上げは見送られると思われます。また市場の織り込みに反し、利上げペースが加速する可能性もありますが、良好な景気や物価見通しを背景とするものであれば、米10年国債利回りも上昇するとみられます。
(2017年8月17日)
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