実は危うい?米国市場の「楽観ループ」
今週の国内株市場ですが、これまでのところ、徐々に上値が切り下がる展開となっています。
日経平均が25日移動平均線をサポートにしながらも売りに押される場面が目立ち、20日(日)に投開票日を迎える参議院選挙や、ベッセント米財務長官が19日(土)の関西万博に出席するために来日し、そのタイミングに合わせて開催される予定の日米関税協議を控えて積極的に動きづらくなっている印象です。
その一方で、別の顔を見せているのが米国株市場です。NYダウは微妙な値動きではありますが、S&P500は最高値圏でのもみ合いが続き、ナスダック総合については、今週に入ってからも最高値を更新する場面があるなど、全体的に堅調です。
もっとも、最高値を更新しているナスダック総合の「上値の伸び」はさほど大きくはなく、サマーラリーと呼べるほどの高揚感はありません。それでもチャート上ではジリ高基調を描いており、「不安材料を抱えながらも、相場の上目線は維持されている」格好です。
しかしながら、現在の相場環境は米国株が演じているほど良好とは言えません。
市場が最も注目している米国の関税政策については、新たな相互関税の税率の通告する書簡を各国に送付し始めたほか、銅および銅製品に対する分野別関税の実施についても表明しています。
また、金融政策の利下げを求めて、トランプ米大統領がパウエルFRB議長への批判を強め、一部メディアからは、同氏が共和党議員らとの会合でパウエルFRB議長の解任を打診したとも報じられています。
このように、ここ最近のトランプ米大統領は強気の姿勢が目立ち始めています。いわゆる「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビって退く)」という言葉があるように、良くも悪くも現在の市場はトランプ慣れしている面があるほか、米国の経済指標も、まだ関税の影響が目立って現れていません。さらに、AI需要を背景にしたテック株など「買える銘柄」の存在もあり、その結果として、株高が維持されています。
こうした状況がトランプ米大統領に自信を持たせ、足元の強気姿勢につながっているように見えます。春先の3月下旬から4月あたまにかけては、トランプ米大統領が強気に出ると、市場は株式・債券・為替の3方向から売り(トリプル安)で反応し、それがトランプ米大統領の過激な行動を牽制する格好になっていましたが、現在はTACOの意識によって株式市場が下がらず、しかも、経済指標や企業決算などの個別の好材料に反応する動きが加わって、相場が上昇していく、微妙な「楽観ループ」に入っていると考えられます。
とはいえ、相場の牽制が効かないことでトランプ米大統領がさらに自信を深めて強気になってしまう懸念があることや、関税の影響がこれから出てくることも考えられること、PER面で見た米国株がすでに割高水準であることなどを踏まえると、足元の米国株の強さは「どこまで騰がるか」ではなく、「いつまで続くか」の方が意識されやすいと思われます。
そのため、市場が冷静になった時の株価調整局面の到来に備えておく必要がありそうです。

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