中銀タカ派発言の余波と地政学リスク
市川レポート(No.413)中銀タカ派発言の余波と地政学リスク
- 先週はECB総裁などのタカ派発言で、ユーロ、ポンド、カナダドルが上昇、ドル円は小動きにとどまる。
- 今週は週初に発表された良好な米経済指標を受け、米ドルが上昇、ドル高・円安の動きが拡大。
- 金融政策正常化は日本株に悪くない材料、北朝鮮リスクは米国の対応が焦点、警戒感は残ろう。
先週はECB総裁などのタカ派発言で、ユーロ、ポンド、カナダドルが上昇、ドル円は小動きにとどまる
6月26日から28日に、ポルトガルのシントラで欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムが開催されました。このフォーラムでは、ECBのドラギ総裁、イングランド銀行(BOE)のカーニー総裁、カナダ銀行(BOC)のポロズ総裁から、そろって金融政策の正常化について前向きな発言がみられ、ドイツ国債、英国債、カナダ国債の利回りが上昇し、ユーロ、英ポンド、カナダドルが、対主要通貨で上昇しました。
この動きを示したものが図表1です。6月26日から6月30日までの間、ドイツ、英国、カナダの10年国債利回りは、いずれも20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超上昇し、通貨もそろって対米ドルで2%超上昇しました。なお10年国債利回りは、日米でも連れて上昇する動きがみられましたが、為替はユーロ、英ポンド、カナダドルを買う相対として米ドルや日本円が売られたため、この2通貨の為替レートは小動きにとどまりました。
今週は週初に発表された良好な米経済指標を受け、米ドルが上昇、ドル高・円安の動きが拡大
為替について、6月26日から6月30日までの間、相対的な強さの順に通貨を並べると、英ポンド、ユーロ、カナダドル、米ドル、日本円となります。日本円が最弱通貨であることから、上記期間において、各通貨の対円為替レートは、いずれも円安方向に振れました。ただし米ドルも相対的に弱い通貨となったため、日本円の下げは対米ドルで最も小さくなりました。
今週は7月3日に米国で6月分のISM製造業景況感指数が発表され、予想を上回る良好な結果となりました。米国発の材料ということで、米10年国債利回りと米ドルの上昇が顕著となりました。6月30日から7月3日までの間、相対的な強さの順に通貨を並べると、米ドル、カナダドル、ユーロ、英ポンド、日本円となります。日本円が依然、最弱通貨である一方、米ドルが最強通貨となったため、日本円の下げは対米ドルで最も大きくなりました。
金融政策正常化は日本株に悪くない材料、北朝鮮リスクは米国の対応が焦点、警戒感は残ろう
日銀が現行政策を維持する見通しが続く限り、金融政策の正常化に関する材料が浮上した場合、それが欧州発でも米国発でも、為替市場は円安に振れやすくなります。その際、主要国で長期金利が上昇しても、株価の大幅な調整につながらなければ、市場がリスクオフ(回避)に傾く度合いは限定されると思われます。そのため日本株にとっても、円安などが追い風となり、それほど悪い材料ではないと考えます。
なお日本時間7月4日午後3時半頃、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表しました。同じく日本時間7月5日午前7時過ぎ頃、ティラーソン米国務長官は北朝鮮がICBMを試射したと述べ、ミサイルはICBMであったとの認識を示しました。市場は比較的冷静な反応を示していますが、朝鮮半島の非核化を目指す米国の今後の対応が注目され、警戒感は残る可能性があります。
(2017年7月5日)
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