原油安の解釈
市川レポート(No.406)原油安の解釈
- 足元の原油安は、米国での生産増加傾向と、リビアとナイジェリアでの生産回復が主因とみられる。
- ただ原油続落なら米シェール企業で採算割れの先も、リビアなどは生産回復なら減産適用となろう。
- 原油はしばらく軟調な動きが予想されるが、現時点では投資家心理や日本株への影響は限定的。
足元の原油安は、米国での生産増加傾向と、リビアとナイジェリアでの生産回復が主因とみられる
ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、5月25日に一時、1バレル=52ドルの高値をつけた後、下げ足を速め、昨日は44ドル22セントの安値をつけています。相場下落の起点となった5月25日は、石油輸出国機構(OPEC)が総会で協調減産の9カ月延長を決めた日でした。それにもかかわらず原油安が続いているのは、以下2つの理由が考えられます。
1つは米国において原油生産の増加傾向が続いていることであり、もう1つはOPEC加盟国でありながら減産の適用が免除されている、リビアとナイジェリアの原油生産が回復していることです。そのため市場では、OPECが協調減産を延長しても、これらの国々の生産増によって、減産効果は抑制されてしまうとの思惑が強まり、これが足元の原油安につながっている可能性があります。
ただ原油続落なら米シェール企業で採算割れの先も、リビアなどは生産回復なら減産適用となろう
米国では、石油掘削装置(リグ)の稼働数が緩やかに増加し続けており、またドライブシーズンを迎えているにもかかわらず、ガソリン在庫が積み上がっています。ただ、このまま原油安が続けば、米国のシェール企業のなかには採算割れとなるところも出てくる可能性があり、米国の原油生産が鈍化すれば、原油価格が下げ止まるという展開も考えられます。
リビアとナイジェリアの5月原油生産量は、4月から日量約35万バレル増加し、これがほぼそのままOPEC加盟国全体の増加量となりました(図表1)。この2カ国が減産の適用を免除されているのは、地政学リスクの影響で生産が落ち込んでいたためです。そのため生産が回復すれば、当然ながら他のOPEC加盟国から減産を求められると思われます。
原油はしばらく軟調な動きが予想されるが、現時点では投資家心理や日本株への影響は限定的
以上を踏まえると、原油相場はしばらく軟調な動きが予想されますが、米国での生産増加傾向と、リビアおよびナイジェリアでの生産回復という2つの要因は、原油安が続くことで生産が抑制される可能性があり、次第に解消していくと考えられます。そのため、ここから原油相場の変動性(ボラティリティ)が急上昇しない限り、投資家心理や日本株への影響は限定されると思われます。
原油相場と日本株の関係について考えた場合、原油安でプラスの影響を受ける業種としては、電気・ガス業、陸・海・空運業、パルプ・紙、化学、ゴム製品などが、マイナスの影響を受ける業種としては、石油・石炭製品、鉱業、卸売業などが、一般に挙げられます。もちろん株価の変動要因は原油以外にもあるため、これらは1つの目安に過ぎませんが、直近の動きをみると、一部そのような傾向も窺えます(図表2)。
(2017年6月16日)
市川レポート バックナンバーはこちら
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会