6月FOMCに対する市場の反応

市川レポート(No.405)6月FOMCに対する市場の反応

  • FOMCのメッセージは、物価低迷は一時的、緩やかな利上げ継続、年内にもバランスシート縮小。
  • ただし、市場は直前に発表された弱めの経済指標を受け、FOMCのメッセージには懐疑的な反応。
  • 修正を迫られるのはFOMCのメッセージか、市場の懐疑的な見方か、カギを握るのは米経済指標。

 

FOMCのメッセージは、物価低迷は一時的、緩やかな利上げ継続、年内にもバランスシート縮小

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では大方の予想通り利上げが決定されましたが、市場の注目はむしろ、①米連邦準備制度理事会(FRB)の景気・物価判断、②今後の利上げペース、③FRBの保有資産(バランスシート)縮小に関する手掛かり、の3点でした。①に関し、FOMCメンバーは2017年の経済成長率見通しを上方修正し、物価見通しを下方修正しました。ただFOMC声明では、物価の伸び悩みは一時的との見方が示されました。

FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)にも大きな変化はなく、年内は引き続きあと1回の利上げが示唆されました。そして今回は、FRBのバランスシート縮小に関する詳細な情報も公表されました(図表1)。つまりFOMCからは、①景気は底堅く、物価の弱さは一時的、②緩やかなペースでの利上げを継続、③早ければ年内にもバランスシート縮小を開始、とのメッセージが送られたことになります。

 

ただし、市場は直前に発表された弱めの経済指標を受け、FOMCのメッセージには懐疑的な反応

ただFOMCを終えた6月14日の米国市場では、前日比で米10年国債利回りが低下し、ドルの対円為替レートも下落する結果となりました(図表2)。また同日におけるフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む追加利上げの確率は、9月が18.0%、12月が38.1%でした。FOMC開催前の6月12日時点では、それぞれ28.2%、41.5%でしたので、FOMCを経て利上げ確率が低下していることが分かります。

FOMCでは、景気、物価、利上げに前向きな姿勢が示されたにもかかわらず、市場に一段の利上げを織り込む動きはみられませんでした。この理由として以下が考えられます。すなわち、6月14日はFOMCの政策発表前に5月米消費者物価指数と5月米小売売上高が発表されましたが、いずれも予想を下回り、市場がFOMCの姿勢に懐疑的な見方を強めたということです。

 

修正を迫られるのはFOMCのメッセージか、市場の懐疑的な見方か、カギを握るのは米経済指標

今回のFOMCから、9月にバランスシート縮小決定、12月に追加利上げを読みとる向きが増えています。米経済がFOMCの予想通りに進展して行けば、このスケジュールとなる可能性もあり、その場合は為替や金利市場における懐疑的な見方は徐々に修正されることになります。逆に、米経済がFOMCの予想通りに進展して行かなければ、景気、物価、利上げに前向きなFOMCの姿勢は徐々に修正されることになります。

どちらが修正を迫られるのか、カギを握るのは今後発表される米経済指標です。この先、注目すべき経済指標は、5月個人消費支出(PCE)物価指数(6月30日)、6月ISM製造業景況感指数(7月3日)、6月雇用統計(7月7日)、6月消費者物価指数(7月14日)、6月小売売上高(7月14日)などが挙げられます。米景気の底堅さと、物価の弱さは一時的であることが確認できれば、米長期金利と米ドルは緩やかな上昇に転じることも期待されます。

 

 

 

 

170615図表1170615図表2

 

 

(2017年6月15日)

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