日米経済対話の焦点
市川レポート(No.381)日米経済対話の焦点
- トランプ米大統領による4月12日のドル高けん制発言は、日米経済対話を意識したものではない。
- 半期為替報告は日銀の金融政策を理解、円安誘導として米国が批判するとの懸念は行き過ぎ。
- 為替は基本的に日米財務省間で協議、今回の経済対話が円高・株安要因となる公算は小さい。
トランプ米大統領による4月12日のドル高けん制発言は、日米経済対話を意識したものではない
日米両政府は4月18日、19日の両日、東京で日米経済対話の初会合を開催します。今回、麻生副総理・財務相とペンス米副大統領は、「マクロ経済での連携」、「経済協力」、「貿易枠組み」を議題とし、それぞれ作業部会を設けることで合意する見通しです。ただ米国はすでに「貿易枠組み」を重視する考えを日本側に伝えており、市場では米国が円相場に言及する可能性があるとの警戒感が強まっています。
こうしたなか、トランプ米大統領は4月12日、米紙のインタビューで「ドルは強くなりすぎている」と発言し、円高の進行につながりました。ただこれは日米経済対話を意識したものではないと思われます。トランプ米大統領はこのインタビューで、中国の為替操作国の認定を見送る考えを示しました。これは北朝鮮政策を巡る米中協力への配慮と推測されますが、就任後100日計画の公約違反となります。そのためドル高の競争力への影響を改めて言及することで、国内支持者への気遣いを示したと考えます。
半期為替報告は日銀の金融政策を理解、円安誘導として米国が批判するとの懸念は行き過ぎ
米財務省は4月14日、為替報告書を発表しましたが、その内容は想定の範囲内であり、円高への警戒を強めるものではありませんでした。まず中国については、先のトランプ米大統領の見解通り、為替操作国の認定は見送られました。ただ中国が20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で確認した為替のコミットメントを遵守し、為替レートの透明性を高めることを米財務省は重視するという表記は維持されました。
次に日本については、内需低迷が貿易不均衡の原因であり、①緩和的な金融政策、②柔軟な財政政策、③構造改革が重要との見解が示されました。ただこの3点は、2月の日米首脳会談ですでに確認されています(図表1)。したがって、米国が日米経済対話において、日銀のマイナス金利政策を円安誘導として批判するのではないかという懸念は、行き過ぎということになります。
為替は基本的に日米財務省間で協議、今回の経済対話が円高・株安要因となる公算は小さい
基本的に為替については、日本の財務大臣と米国の財務長官との間で緊密な協議を続けていく方針が2月の日米首脳会談で示されています。そのため今回の麻生副総理・財務相とペンス米副大統領との対話の中で、為替が議論される可能性は低いと考えます。なお冒頭の3つの議題のうち、「マクロ経済での連携」と「経済協力」については、日米とも前向きな話し合いが予想されます。
一方、「貿易枠組み」について、日本は環太平洋経済連携協定(TPP)での協議などを通じて米国との貿易問題は解決済みとの立場ですが、米国は前述の通りこれを重視する考えです。そのため経済対話とは別に、世耕経済産業相とロス米商務長官の日米貿易担当閣僚同士が、貿易問題に関する会談を行うこととなりました(図表2)。ただ報道によれば、個別分野や関税などは議題にならない見通しです。以上より、今回の日米経済対話が円高・株安要因となる公算は小さいとみています。
(2017年4月17日)
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