米利上げ決定~ドル円相場と日本株への影響を考える

市川レポート(No.367)米利上げ決定~ドル円相場と日本株への影響を考える

  • 政策決定は予想通り、ドットチャートにも大きな変化なく、緩やかなペースでの利上げ継続を確認。
  • FOMC後の米長期金利低下とドル安は一時的な利益確定の動き、過度な懸念は必要なかろう。
  • 緩やかな米利上げは日本株に追い風だが一段高にはトランプ政策の影響の見極めが求められる。

政策決定は予想通り、ドットチャートにも大きな変化なく、緩やかなペースでの利上げ継続を確認

米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月14日、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、年0.50~0.75%から0.75~1.00%への引き上げを決定しました。FOMC声明での物価に関する表現(図表1)などに若干の変化がみられたものの、総じて緩やかなペースでの利上げ継続が確認された格好となりました。

最新の経済見通しでは、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)にも大きな変化はみられませんでした。2017年と2018年の利上げペースはともに前回と変わらず年3回の示唆となりましたが、2019年は年3回から年3.5回の示唆に若干増えました(図表2)。しかしながら政策金利の長期予想水準は3.00%で前回と変わらず、一部で懸念されていたタカ派的な予想が示されることはありませんでした。

FOMC後の米長期金利低下とドル安は一時的な利益確定の動き、過度な懸念は必要なかろう

FOMCの結果を好感し、3月15日のダウ工業株30種平均は前日比112ドル73セント高の20,950ドル10セントで取引を終えました。その一方で米長期金利が低下し、ドルは対主要通貨で大きく下落しました。日本時間3月16日午前6時時点で、米10年国債利回りは前日比10.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.493%付近、ドル円は1ドル=113円38銭付近で、それぞれ推移しています。

米長期金利の低下とドル安は、FOMCの結果を受けた一時的な利益確定の動きであり、過度な懸念は必要ないと思われます。なお今回はイエレン議長の記者会見も行われましたが、緩やかなペースでの利上げが適切との見解が改めて示されました。この他、記者会見では特に目新しいものはありませんでしたが、少なくとも今回のFOMCが過度にタカ派的な内容とならず、市場の混乱が回避できたことは大きな安心材料です。

緩やかな米利上げは日本株に追い風だが一段高にはトランプ政策の影響の見極めが求められる

FOMCの結果を受けたFF金利先物市場の動きをみると、2017年の利上げペースは2.4回、2018年は2.1回、2019年は1.2回の織り込みとなっています(図表2)。前日の織り込み回数からやや減少し、またFOMCメンバーが予想する利上げペースとも乖離していますが、緩やかなドル高・円安を予想する上での1つの支援材料であり、日本株にもいくらかの追い風になると思われます。

日本株が上昇基調を強めるための条件としては、①米国の通商政策や財政政策の内容が明らかになり、日本企業への影響が限定的と確認できること、②米国の経済が底堅く推移するなかで利上げ観測が強まり、ドル円相場が緩やかなドル高・円安方向で安定すること、が考えられます。②の条件は整いつつありますので、日経平均株価の2万円回復には、①の見極めが求められます。

170316図表1170316図表2

 

 

 (2017年3月16日)

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