重要イベント途中経過と市場の反応
市川レポート(No.366)重要イベント途中経過と市場の反応
- 英国のEU離脱通知は3月下旬の見通しで、中国の経済指標も良好なことから市場は安定推移。
- OPEC月報の一部の内容に原油が急落、ただその後は反発し、市場全体の動揺にはつながらず。
- 最大の注目はFOMCで、ドットチャートが多少タカ派でも、従来の利上げペース維持なら混乱回避。
英国のEU離脱通知は3月下旬の見通しで、中国の経済指標も良好なことから市場は安定推移
今回は3月13日付レポートでお話しした今週の重要イベントについて、ここまでの途中経過と市場の反応をまとめます(図表1)。まず3月13日に英議会で行われた欧州連合(EU)離脱法案の再審議について、下院が上院の修正案(EU市民の権利保障など)を否決し、上院がこれを追認したことで、原案通りの可決となりました。ただ英メディアによれば、EUへの離脱通知は3月27日の週になる見通しとのことです。
次に3月14日に発表された1月と2月の中国主要経済指標は、固定資産投資と鉱工業生産が市場予想を上回り、総じて景気の強さを示す内容となりました。特に固定資産投資は、民間投資の加速を背景に、前年同期比+8.9%と市場予想(同+8.3%)を大きく上回る伸びとなりました。なお同日に予定されていた米独首脳会議は3月17日に日程変更となりましたが、ここまで市場は比較的落ち着いた動きが続きました。
OPEC月報の一部の内容に原油が急落、ただその後は反発し、市場全体の動揺にはつながらず
ただ3月14日に公表された石油輸出国機構(OPEC)月報で、サウジアラビアがOPECに報告した2月生産量は、日量26万3,300バレル増の同1,001万1,000バレルとなり、これを受けWTI原油先物価格は一時1バレル=47ドル09セントの安値まで急落しました。しかしながらOPECが通信社など外部の情報源から算出したデータでは、同国の産油量は日量6万8,100バレル減の同979万7,000バレルで、加盟国全体でも減産の進展が確認されました。
そのためWTI原油先物価格はいったん反発して3月14日の取引を終えました。また翌3月15日、ベネズエラ大統領とOPEC事務局長が石油価格の安定について来週協議するとの報道に、WTI原油先物価格は時間外取引で1バレル=48ドル台を回復しました。このように原油価格は依然不安定な動きをみせてみますが、金融市場全体の動揺にはつながっておらず、円相場と日本株への影響も限定されています。
最大の注目はFOMCで、ドットチャートが多少タカ派でも、従来の利上げペース維持なら混乱回避
本日3月15日は、オランダでは下院選挙が行われ、米国では債務上限の期限が到来と連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表が控えます。オランダで14日に公表された最新世論調査では、極右政党である自由党の支持率低下が明らかになり、また米債務上限も米財務省が特別措置で実質延期するとみられることから、これらのイベントで市場が混乱する恐れは小さいと考えます。
やはり最大の注目はFOMCで、特にメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)に関心が集まっています。市場では2018年の利上げペースが3回から4回に増えるとの見方もありますが、仮にその場合でも、政策金利の長期見通しが3.0%で変わらず、またFOMC声明やイエレン議長の記者会見で緩やかなペースでの利上げ方針の継続が示唆されるなど、過度にタカ派的な内容でなければ、市場の大きな混乱は避けられると思われます。
(2017年3月15日)
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