日経平均株価が上昇基調を強めるための条件
市川レポート(No.359)日経平均株価が上昇基調を強めるための条件
- 日経平均やTOPIXの上値が重いのは、まだ詳細が判明していないトランプ政策への警戒の表れ。
- 株価上昇には、トランプ政策の日本企業への影響は限定的と確認できることなど、諸条件が必要。
- 年前半は株価に不安定さが残るものの諸条件が揃い始める年後半に上値を試す余地は広がろう。
日経平均やTOPIXの上値が重いのは、まだ詳細が判明していないトランプ政策への警戒の表れ
米国ではダウ工業株30種平均など主要株価指数が連日過去最高値を更新するなか、日本では日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)の上値の重さが目立ちます。この差はトランプ政策への思惑に起因するものと推測されます。つまり「America First(米国第一)」の通商政策や財政政策は、米国企業には恩恵となる一方、日本企業には少なくとも詳細が判明するまでは警戒が必要という見方です。
ただ全ての日本株の足取りが重いわけではありません。足元では、トランプ政策による米インフラ投資の増加期待や中国景気の安定を背景に、鉄鋼や非鉄金属など産業用素材価格が上昇しており、東証33業種のうち海運業、非鉄金属、鉄鋼のパフォーマンスは良好です。また外部要因に左右されにくい中小型株に個人投資家の物色がみられ、ジャスダック平均株価も堅調に推移しています(図表1)。
株価上昇には、トランプ政策の日本企業への影響は限定的と確認できることなど、諸条件が必要
日本企業の直近の決算も総じて好調でした。報道によれば、上場企業の2016年10-12月期の純利益は前年同期比で25%増加し、6四半期ぶりの増益となりました。背景には、米大統領選挙以降の円安進行や商品相場の持ち直し、そして新興国経済の循環的回復があるとみられます。ただ前述の通り、トランプ政策は内容次第で日本企業にも大きな影響を与える恐れがあり、その不透明感から株式指数全体の上昇には至っていません。
従って、日経平均株価やTOPXが上昇基調を強めるための条件としては、①米国の通商政策や財政政策の内容が明らかになり、日本企業への影響が限定的と確認できること、②米国の経済が底堅く推移するなかで利上げ観測が強まり、ドル円相場が緩やかなドル高・円安方向で安定すること、が考えられます。逆にこれらの条件が揃わない間は、日経平均株価やTOPXは上値の重い展開が続く可能性があります。
年前半は株価に不安定さが残るものの諸条件が揃い始める年後半に上値を試す余地は広がろう
①について、為替政策は3月17日、18日にドイツで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議におけるムニューチン米財務長官の発言が注目されます(図表2)。また通商政策は今後の日米経済対話で自動車貿易などに関し厳しい交渉も予想されます。そして財政政策はトランプ米大統領の両院合同本会議での演説(2月28日)や予算教書、米議会の予算決議案を通じて概要が明らかになる見通しですが、財政規模や実行までのスケジュールが焦点です。
また②について、3月3日に米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長とフィッシャー副議長の講演が予定されています。仮に3月14日、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを行う場合、この講演で手掛かりが示される可能性はありますが、弊社は3月の利上げは見送りと予想します。以上より、年前半は①と②の条件が揃う見通しが立ちにくく、日経平均株価やTOPIXはやや不安定な動きも予想されますが、年後半は米国で利上げや財政政策が着実に遂行される限り、上値を試す余地は広がると思われます。
(2017年2月23日)
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