米国の円安牽制と日本株
市川レポート(No.347)米国の円安牽制と日本株
- トランプ発言は米為替政策の基本方針ではなく、そのため市場は比較的冷静に受け止めたとみる。
- 総じて良好な企業決算、日銀のETF買い入れ、現行の日米金融政策方針も日本株の下支えに。
- 日本株は当面トランプ大統領の言動に振れやすい展開へ、米経済政策の詳細と実効性に注目。
トランプ発言は米為替政策の基本方針ではなく、そのため市場は比較的冷静に受け止めたとみる
トランプ米大統領は1月31日、米製薬企業との会談において、中国と日本は通貨安誘導を繰り広げていると述べ、日中の為替政策を批判しました。これを受けてドル円は同日のニューヨーク外国為替市場で一時1ドル=112円08銭水準までドル安・円高が進みました。その後ドル円は113円を挟んで上下に方向感のない動きが続き、日経平均株価も2月1日は前日比で上昇、2月2日は下落して取引を終えています。
このように、少なくともトランプ発言直後に円が急騰したり日本株が急落することはありませんでした。そもそも今回の発言は、米製薬企業に薬価の引き下げや米国内での製造拡大を求めるなかで出たものであり、米国として為替政策の基本方針を示したものではありません。具体的には、米企業の海外移転は中国や日本の為替操作のせいであり、米企業は国内に戻るべきだという訴えのなかで触れたに過ぎず、そのため市場も比較的冷静に受け止めたと思われます。
総じて良好な企業決算、日銀のETF買い入れ、現行の日米金融政策方針も日本株の下支えに
日本株が急落しなかった理由は他にも考えられます。日本では3月期決算企業の2016年10-12月期決算発表が行われています。米大統領選挙以降の円安進行や商品相場の持ち直し、新興国経済の循環的回復が通期業績見通しの上方修正につながっているケースもみられ、これが日本株の下支えになっていると思われます。さらに日銀が1月30日から2月1日まで連日ETFの買い入れを行っており(図表1)、これも下値不安の払拭につながっているとみられます。
なお日銀は1月30日、31日の金融政策決定会合で政策の現状維持を決定し、米連邦準備制度理事会(FRB)も1月31日、2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定しました。いずれも予想通りの結果で波乱なく終了しましたが、日銀の緩和継続とFRBの慎重なペースでの利上げという政策方針は、現段階で日本株にとって好ましいものと思われます。
日本株は当面トランプ大統領の言動に振れやすい展開へ、米経済政策の詳細と実効性に注目
ただ日本株もドル円も、しばらくはトランプ米大統領の言動で上下に振れやすい相場展開が予想されます。目先の重要イベントは2月10日に予定されている日米首脳会談です(図表2)。ここでは米国側からの自動車貿易に関する具体的な要求の有無、またドル円相場への言及の有無が注目されます。仮に円安誘導を批判する発言が出た場合は、1月31日の米製薬企業に向けた発言とは持つ意味が異なるため、市場は大幅な円高・株安で反応する恐れがあります。
またトランプ米大統領は2月28日に米上下両院合同本会議で演説を行い、政策運営の大枠を示す予定です。そのため予算教書(トランプ米大統領が議会に示す翌会計年度の予算案)は3月にずれ込む見通しとなりました。これらのイベントを経て、いよいよ経済政策の詳細が明らかになります。その実効性は日本株にも大きな影響を与えると思われるため、米大統領と議会の協調関係が重要なカギを握ることになります。
(2017年2月2日)
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