日米ともに金融政策をRethink(再考)~日本編

市川レポート(No.291)日米ともに金融政策をRethink(再考)~日本編

  • 日銀も総括的な検証で金融政策をRethink(再考)、結果は9月の政策決定会合で公表へ。
  • 基本的な政策の枠組みと物価目標の2%水準は維持、ただ達成時期の明示はなくなる可能性。
  • 早期目標達成のための施策は様々な見方が存在、弊社は0.1%のマイナス金利の深掘りを予想。

日銀も総括的な検証で金融政策をRethink(再考)、結果は9月の政策決定会合で公表へ

前回のレポートでは、米国で金融政策の「Rethink(再考)」に関する議論が活発化していることをお話ししました。日本でも現在、「量的・質的金融緩和」および「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」について、日銀が総括的な検証を行い、早期物価目標達成のための政策を「Rethink(再考)」しています。検証結果は9月20日、21日の日銀金融政策決定会合において公表される見通しです。

検証に関しては、8月1日付レポート「日銀は9月にどのような検証を行うのか」で一度解説していますが、依然として現行政策の枠組みの変更有無や追加緩和の有無について、市場のコンセンサスは固まっていないように見受けられます。そこで今回は、日銀が「Rethink(再考)」すると思われる主要な項目を列挙し、それぞれについて市場ではどのような見方があるのか、簡単に整理してみます。

基本的な政策の枠組みと物価目標の2%水準は維持、ただ達成時期の明示はなくなる可能性

まず基本的な政策の枠組みについては、これまでの政策は効果があったという日銀の判断の下、大幅な修正は加えられないとの見方が市場では優勢です。また、物価目標は依然として未達となっていますので、早期達成のための施策が示されるというのが概ね共通した認識です。なお目標未達の原因としては、原油安、新興国経済の減速、消費増税、賃金の伸びの鈍さなどが挙げられると思われます。

次に物価目標の水準は、2%で変わらずとの見方が多数である一方、達成時期は緩和されるとの予想もみられます。「量的・質的金融緩和」はそもそも短期決戦型の政策であり、目標未達の原因が原油安など金融政策で対応できない事象にあるならば、今後も短期では未達リスクが伴います。そのため、むしろ達成時期を「できるだけ早期」などの表現にとどめ、長期持久戦型の政策に転じた方が合理的であり、実際その可能性は高いと思われます。

早期目標達成のための施策は様々な見方が存在、弊社は0.1%のマイナス金利の深掘りを予想

次に具体的な施策に目を向けます。長期国債の買い入れに関する市場の見通しには、保有残高の増加ペース(現行年間約80兆円)に対し、ペースの減速を伴う70~90兆円程度のレンジを付けるというものがあります。ただレンジ下限で買い入れた場合、量の縮小(テーパリング)という思惑から、円高や長期金利上昇につながる恐れもあるため、レンジ設定の公算は小さいとみられます。

その他の市場見通しも含め、まとめると図表1の通りになります。9月20日、21日の会合で追加緩和を行うか否かの見方も分かれていますが、弊社では検証結果の公表と同時に0.1%のマイナス金利の深掘りが行われると予想しています。黒田総裁も最近、マイナス金利について所期の効果を発揮していると述べており、その可能性は高いと考えます。なお検証結果と施策内容に関する市場のコンセンサスが固まってない以上、公表後に相場の変動率が一時的に拡大することも想定され、注意が必要です。

160825図表1

 

 (2016年8月25日)

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