現時点で想定される本邦経済対策の概要
市川レポート(No.279)現時点で想定される本邦経済対策の概要
- 「真水」部分は複数年度にわたって約6兆円、「財政投融資」も約6兆円の規模が想定される。
- 事業規模は20兆円を超える見通し、一億総活躍関連施策やインフラ整備など4つの柱からなる。
- 27日の安倍首相発言で、経済対策は想定より若干大きめの規模で市場に織り込まれた模様。
「真水」部分は複数年度にわたって約6兆円、「財政投融資」も約6兆円の規模が想定される
政府の経済対策は8月2日に閣議決定される見通しとなり、その概要は新聞報道などで少しずつ明らかになってきました。そこで今回は現時点で想定される経済対策の内容を簡単にまとめてみます。報道によれば、国による直接の財政支出である「真水」部分は約6兆円となり、2016年度2次補正予算案(約2兆円)と2017年度予算案で賄われる見込みです。このうち財源の一部として建設国債の発行も議論されています。
また政府系金融機関や地方公共団体などの財投機関を通じて民間に資金を供給する「財政投融資」は、約6兆円の規模が想定されています。財政投融資の原資については、財投機関が自ら財投機関債(社債)を発行して調達する方法や、国の特別会計である財政投融資特別会計(財投特会)が財投債(国債)を発行して財投機関に融資する方法などがあります。そのため約6兆円規模の財政投融資は、これら債券の発行を伴うと推測されます。
事業規模は20兆円を超える見通し、一億総活躍関連施策やインフラ整備など4つの柱からなる
この他、国の補助を受けた民間事業が約6兆円、財政投融資とは別の政府系金融機関による融資が約5兆円との報道もあり、真水部分と財政投融資を合わせると、事業規模は20兆円を超えることになります(図表1)。経済対策の内容については、①一億総活躍の関連施策、②21世紀型のインフラ整備、③英国の欧州連合(EU)離脱対策、④復興・防災対策、の4つが柱になるとみられます(図表2)。
①には最低賃金の引き上げ、雇用保険料の引き下げ、保育・介護の受け皿整備などが盛り込まれ、②には観光や農業輸出の促進に向けたインフラ整備、リニア中央新幹線の最大8年前倒しなどが含まれる見通しです。また③は中小企業の資金繰り支援を柱とし、国際協力銀行(JBIC)による海外展開向け融資の2年間延長などが検討され、④については、熊本地震の復興に向けて基金が創設される模様です。
27日の安倍首相発言で、経済対策は想定より若干大きめの規模で市場に織り込まれた模様
なお7月27日の日本時間昼頃、「経済対策の事業規模は27兆円」、「政府は50年国債の発行を検討」、という報道が相次ぎました。市場でこれが好感され、日銀が経済対策と歩調を合わせて追加緩和を行うとの期待も高まり、一時ドル円は106円54銭水準までドル高・円安が進行、日経平均株価は前日比400円超の上昇となりました。その後、財務省から50年国債発行検討の事実はないとのコメントが出ると、相場は次第に落ち着きました。
安倍首相は27日午後の講演で、財政措置13兆円(真水と財政投融資の合計と推測されます)、事業規模28兆円超と述べたことから、想定よりも若干大きめの規模が市場に織り込まれたと思われます。この結果、28日、29日の日銀金融政策決定会合に改めて注目が集まることになりました。基本的に、現行政策の枠組み内での追加緩和であればいったん円高・株安方向の反応、買い入れ資産の対象拡大など新たな施策導入となればいったん円安・株高方向の反応とみていますが、後者の新たな施策については今回の実施は難しいと思われます。
(2016年7月27日)
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