2月の円高と3月のドル安

市川レポート(No.226)2月の円高と3月のドル安

  • ドル円はダブルボトムを割り込んで下落、今後はドル安・円高方向の動きに幾分警戒が必要。
  • ただ今回の110円台は「ドル全面安」によるもので、2月の「円全面高」によるものとは異なる。
  • リスクオフの円買い主導でドル安・円高が一気に進行するリスクは、2月よりも後退した可能性。

ドル円はダブルボトムを割り込んで下落、今後はドル安・円高方向の動きに幾分警戒が必要

ドル円のチャートをみると、2月11日の安値110円99銭水準と、2月24日の安値111円04銭水準がダブルボトムとなり、ネックラインが2月16日の高値114円87銭水準に位置する格好になっていました。しかしながらその後、ドル円はこのネックラインを上抜けることができず、3月17日には一時1ドル=110円67銭水準をつけ、ダブルボトムを割り込みました。そのため今後はドル安・円高方向の動きに幾分警戒が必要です。

そこでフィボナッチ・リトレースメントというテクニカル分析を用いて、客観的なドル安・円高の目安となる水準を考えてみます。これは相場が反落(反転)した場合、押し(戻り)の目途値をみる上でよく用いられる手法です。具体的には、安値(高値)から高値(安値)までの上げ幅(下げ幅)から23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%押し(戻し)た水準を目安と考えます。

ただ今回の110円台は「ドル全面安」によるもので、2月の「円全面高」によるものとは異なる

2011年10月の安値75円35銭水準から、2015年6月の高値125円86銭水準までの上げ幅の38.2%押しを計算すると、106円57銭水準が示されます(図表1)。ただし、これはあくまでもチャートが示す1つの目安に過ぎず、必ずしもここまでドル安・円高が進行するというものではありません。実際、ドル円を取り巻く状況は変化しており、2月の110円台は「円全面高」によるものでしたが、3月の110円台は「ドル全面安」によるものです。

2月は世界的にリスクオフ(回避)の動きが強まり、日経平均株価が15,000円台を割り込むなか、「円全面高」の展開となりました。一方、3月は米連邦公開市場委員会(FOMC)の予想外のハト派的な内容を機に、「ドル全面安」となりました。市場環境は2月と異なり、3月22日の日経平均株価は一時17,000円台を回復し、また米国株、WTI原油価格、新興国通貨も総じて底堅く推移するなど、極端なリスクオフ(回避)の動きはみられせん。

リスクオフの円買い主導でドル安・円高が一気に進行するリスクは、2月よりも後退した可能性

なお「ドル全面安」である以上、ドル円レートは当然ながら円高となってしまいます。しかしながらユーロなど米ドル以外の通貨とのクロス円レートは、多くの場合むしろ円安に振れています(図表2)。そのため、110円を超えるドル安・円高への政府・日銀の警戒感は依然として強いとみられるものの、3月に入り警戒の度合いがいくらか和らいだ可能性があると思われます。

FOMCで緩やかな利上げペースが示唆されたため、ドル円の上値の重さは想定しておく必要があり、またチャートではダブルボトムを割り込んでいることから、やはりドル安・円高方向の動きには注意が必要と考えます。ただ主要国の株価や商品相場が落ち着いている現状を勘案すれば、リスクオフの円買い主導でドル安・円高が一気に進行するリスクは、2月よりも後退したのではないかとみています。

160322 図表1160322 図表2

 

 (2016年3月22日)

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