日本株の変動をどう捉えるか
市川レポート(No.143)日本株の変動をどう捉えるか
- 足元の値幅は歴史的な水準に拡大、9月9日の急騰は不安定な相場の証左とみる。
- 大幅反発は世界的な株価の動きに歩調を合わせた面もあるが、売買は活況ではない。
- 今しばらくボラティリティは高止まり、投資家が冷静さを取り戻すには時間がかかろう。
足元の値幅は歴史的な水準に拡大、9月9日の急騰は不安定な相場の証左とみる
日経平均株価は9月9日に大幅反発し、前日比1,343円43銭(7.7%)高の18,770円51銭で取引を終え、前日からの上げ幅は過去6番目、上昇率は9番目を記録しました。日々の値幅の平均値は、終値で20,000円を割り込んだ8月21日から計算すると約570円、中央値(データを大きさの順に並べたとき中央に位置する値)は約579円となります。数字だけみれば1990年の年間の平均値(約601円)や中央値(約519円)並みであり、バブル崩壊相場に匹敵する値幅の大きさとなっています。
なお中国財政省は9月8日、主要な建設プロジェクトの加速や官民パートナーシップ(PPP)モデルを通じた民間資金の活用など、財政政策に関する声明を発表しており、これが日本株買い戻しの手掛かりとなったとの見方もあります。ただこれによって中国景気の先行き懸念が完全に解消されたとも思えず、米利上げの不透明感も残ることから、9日の日本株急騰はやはり不安定な相場の証左とみるべきと考えます。
大幅反発は世界的な株価の動きに歩調を合わせた面もあるが、売買は活況ではない
世界に目を向けると、多くの国で株価は8月24日に安値をつけた後、少しずつ下値を切り上げ、現時点で二番底は回避されている状況です(図表1)。これに対し日本株は9月に入って二番底をつけるなど、相対的に軟調な動きが際立っていました。9月8日も日本を除いて主要国の株価がほぼ全面高となったことから、翌9日に日本株に対する過度な悲観の修正が一気に進んだとも考えられます。
しかしながらこれだけの大幅上昇にもかかわらず、売買がそれほど活況でないことはやや気掛かりです。9月9日の東証1部の売買代金は3兆1,483億円でした(図表2)。これに対し株価が大きく下落した8月24日は4兆1,075億円、翌25日は4兆9,240億円に達していました。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、ここへきて様子見姿勢の投資家が増え、比較的薄商いになったことが値幅の急速な拡大につながったと推測されます。
今しばらくボラティリティは高止まり、投資家が冷静さを取り戻すには時間がかかろう
9月9日の急騰をもって株式相場の下値不安が解消したとみるのはまだ早計と考えます。日経平均株価について歴代上昇幅の1位から5位をみると、1990年が1位、4位、5位を占めています。これらはいずれもバブル崩壊による下落相場のなかでの大幅反発でした。もちろん当時と単純比較はできませんが、1,000円を超える上昇幅だけで底打ちと判断することは難しいと思われます。
当面の間、日本株の価格変動性(ボラティリティ)は高止まりし、上下に振れ幅を伴う相場展開が予想されます。ただ日本では投資効率の改善期待につながる株式投資に関する制度改革が着実に進み、また主力株や優良株は割安な水準まで低下しています。この先、中国景気や米利上げに関する不確実性が低下に向かえば、投資家は次第に冷静さを取り戻し、日本株の相対的な優位性に改めて目が向けられると考えます。
(2015年9月10日)
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