米雇用統計後の日本株および円相場の見通し

市川レポート(No.127)米雇用統計後の日本株および円相場の見通し

  • 7月の雇用統計は少なくとも9月利上げのハードルを高める内容ではない。
  • 日本株は米利上げ開始まで米株に連れて不安定な値動きとなる場面も予想される。
  • 米利上げ後もドル円が年内に130円を超えてドル高・円安が進行する可能性は低い。

 

7月の雇用統計は少なくとも9月利上げのハードルを高める内容ではない

 8月7日に発表された7月米雇用統計(速報値、季節調整済み)では、非農業部門雇用者数が前月比21.5万人増加し、市場予想(22.5万人)を下回りました。ただ5月の雇用者数の伸びが25.4万人から26.0万人へ、6月も22.3万人から23.1万へそれぞれ上方修正され、安定的に20万人を超える雇用の伸びが続いていることが確認されました。失業率は前月と変わらず5.3%でしたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが完全雇用における失業率とみる水準(5.0%~5.2%)付近にあります。

 時間当たり賃金は前年比+2.1%と前月の同+2.0%から小幅ながら上昇しましたが、依然として賃金面からの物価上昇圧力は限定されています。ただ米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は利上げ遅延による景気過熱リスクを指摘しており、7月に微調整されたフォワードガイダンスは労働市場の利上げ条件が整いつつあることを示唆しました。これらを勘案すれば、今回の雇用統計はFRBにとって少なくとも9月利上げのハードルを高める内容ではないと考えられ、フェデラルファンド(FF)金利先物市場から算出される9月利上げの確率も上昇しつつあります(図表1)。  

日本株は米利上げ開始まで米株に連れて不安定な値動きとなる場面も予想される

 雇用統計の結果を受けた利上げ警戒感の高まりから、ダウ工業株30種平均は2011年以来およそ4年ぶりの7営業日続落となりました。多くの市場参加者が利上げによる金融市場への影響を見極めたいと慎重姿勢を強めるのは合理的であり、足元の米国株の動きに違和感はありません。なお米ドル高や原油安は短期的に株安材料となり得ますが、いずれも米国景気を一気に冷え込ませる程のものではないと考えます。

 一方、日本に目を向けた場合、円安や消費増税の影響の一巡などが多くの企業にプラスに作用し、報道によれば4-6月期決算における上場企業の連結経常利益は前年同期比で+24%に達しました。ただ日本株は少なくとも米利上げが開始されるまで、米株に連れて不安定な値動きとなる場面も予想されます。また中国の株式相場と景気動向にも引き続き注意が必要と思われます。

米利上げ後もドル円が年内に130円を超えてドル高・円安が進行する可能性は低い

 米国の利回り曲線(イールドカーブ)の形状は、1年前と比べると短期ゾーンの上昇と長期ゾーンの低下により、平坦化(フラットニング)が進行しています(図表2)。これは、目先の利上げが短期ゾーンに織り込まれる一方、先行きの緩やかな利上げペースが長期ゾーンに織り込まれていることを示唆しています。また実際に利上げが開始されても、FRBは国債などの再投資を継続して流動性供給を維持するとみられることから、大幅なイールドカーブの上方シフト(短期から長期にわたる金利上昇)は発生しにくいと思われます。したがってドル円相場については、日銀に追加緩和を急ぐ姿勢がみられないことも考えあわせれば、上昇度合いは限定的となり、年内に130円を超えてドル高・円安が進行する可能性は低いとみています。

  150810 図表1 150810 図表2  

 (2015年8月10日)

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