豪州経済と豪ドル相場の見通し

市川レポート(No.125)豪州経済と豪ドル相場の見通し

  • 2015年の豪州経済成長率は2%台前半程度、政策金利は当面据え置きを予想。
  • 豪ドルは対米ドルで当面は0.72~0.75米ドルのレンジ推移を見込む。
  • 豪ドル円は89~94円のレンジ内で徐々に底堅さを形成していく動きに。

 

2015年の豪州経済成長率は2%台前半程度、政策金利は当面据え置きを予想

 オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は8月4日の理事会で、政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを2.0%に据え置くことを決定しました。今回の声明では為替に関し、従来の「主要商品価格の大幅な下落を考慮すれば、豪ドルは更なる減価の可能性と必要性がある」という文言が、「主要商品価格の大幅な下落に豪ドルは適合している」に変更されました。これについては、豪ドルの調整が進んだことで、RBAの更なる豪ドル安を望む姿勢は弱まったと解釈することができます。

 一方、景気と物価の判断は、長期平均をいくらか下回る経済成長率が続いており、物価はこの先1、2年、インフレターゲットに沿った伸びになるとの見方が維持されました。2015年の豪州経済を展望した場合、低調な設備投資に対し、個人消費は比較的堅調であることなどから、年間の実質GDP成長率は前年比2.3%程度を見込んでいます。政策金利は当面据え置きを予想しますが、商品価格の下落で関連企業の生産や輸出の下振れリスクがあるため、追加利下げの余地は残るとみています。  

豪ドルは対米ドルで当面は0.72~0.75米ドルのレンジ推移を見込む

 次に豪ドル相場について考えてみます。7月7日に終値ベースで1豪ドル=0.75米ドルを割り込んだ後、7月31日には0.7235米ドル水準の安値をつけました。豪ドル安の背景には①商品価格の下落、②中国の景気減速懸念、③米利上げ観測があります。豪州の主要輸出品目である鉄鉱石や石炭の価格低迷による交易条件の悪化(図表1)、豪州輸出の国別シェアトップである中国の景気減速が国内景気に及ぼすリスクの高まり、米利上げ観測を背景とする米ドル高、これらの要因が重なったことにより、豪ドルは対米ドルで大きく減価しました。

 ①~③の材料が消化された場合、すなわち中国の景気腰折れ懸念が後退して商品需給の見通しが改善し、米利上げ後も市場が混乱しないことを確認できた場合、豪ドルの反発は期待できますが、それには今しばらく時間を要すると思われます。ただ前述の通り、当局の更なる豪ドル安を望む姿勢は弱まったとの推測に基づけば、豪ドルは目先1豪ドル=0.72米ドル台での下値固めに入り、当面は0.72~0.75米ドルのレンジを形成することが予想されます。

豪ドル円は89~94円のレンジ内で徐々に底堅さを形成していく動きに

 豪ドル円は、7月9日と28日につけた89円台前半がダブルボトムを形成しており、8月4日のRBA理事会を受けて足元では91円台を回復しています(図表2)。豪ドル円については、豪ドル、米ドル、円、それぞれの材料を整理する必要があります。豪ドルと米ドルについてはすでにお話しした通りです。円については、引き続き日銀の金融政策は注目されますが、追加緩和を急ぐほどの状況ではなく、大幅な円安の進行は見込み難いと考えます。ドル円は米ドルの利上げを踏まえて緩やかに上昇するという前提に立てば、豪ドル円は89円台を底に、まずは89~94円のレンジ内で徐々に底堅さを形成していく動きになると思われます。 

    150805 図表1150805 図表2 

 (2015年8月5日)

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