ギリシャ金融支援失効後に予想される展開

市川レポート(No.102) ギリシャ金融支援失効後に予想される展開

  • 金融支援が失効し、IMFへの返済が延滞しても、市場は比較的落ち着いた動きに。
  • 市場の関心はすでに国民投票に移っており、受け入れ賛成ならリスクオフは修正へ。
  • ギリシャ問題は受け入れ賛成でも完全解決にはならず、市場の長期的な懸念材料に。

 

金融支援が失効し、IMFへの返済が延滞しても、市場は比較的落ち着いた動きに

 ギリシャ向け第2次金融支援は、7月1日午前0時(日本時間の同日午前7時)に期限切れとなり失効しました。またギリシャは同日同時刻を期限とする国際通貨基金(IMF)への約15億ユーロの融資を返済することができず、債務は延滞となりました。ギリシャ政府は6月30日に債務再編を含む2年間の金融支援を求める新提案を提出しましたが、同日のユーロ圏財務相緊急会合で、この提案は退けられました。なお7月1日の東京市場では、株式、為替、債券、いずれも比較的落ち着いた動きとなっています。 

市場の関心はすでに国民投票に移っており、受け入れ賛成ならリスクオフは修正へ

 金融市場の関心はすでに7月5日に実施されるギリシャの国民投票に移っているように思われます。国民投票では欧州連合(EU)側の財政改革案について、受け入れの是非を問うことになりますが、その結果次第で今後のギリシャ支援の方向性は大きく変わる可能性があります。「受け入れ賛成」という結果になれば、金融支援を巡るEUなど債権団との交渉は再開されると思われるため、金融市場はこれを好ましいシナリオとし、リスオフ(回避)修正の動きを強めるとみています。ただ「受け入れ賛成」は、これまで緊縮反対の立場を続けてきたチプラス政権への「不信任」を意味するため、政権交代という展開も想定しておく必要があると考えます。しかしながらその場合でも新政権は民意を反映し、緊縮の受け入れを前提としてEUとの協議に臨むことになることから、政局の流動化は相場の悪材料にはならない見通しです。

 一方、「受け入れ反対」という結果になれば、これはチプラス政権への「信任」を意味することになるため、チプラス首相は民意を盾にEU側へ債務再編や緊縮見直しを迫ることが予想されます。しかしながらこれまでEU側は緊縮策の受け入れを金融支援の条件としており、この方針を簡単に転換するとは思えません。そのため「受け入れ反対」という結果は、ギリシャ向け金融支援の完全な打ち切りにつながりかねず、金融市場に動揺をもたらす恐れがあります。

ギリシャ問題は受け入れ賛成でも完全解決にはならず、市場の長期的な懸念材料に

 いずれにせよ国民投票は最終的な結果が明らかになるまで予断を許さず、翌6日の東京市場は株式などを中心に大きく動意づく可能性があります。なおその間、欧州中央銀行(ECB)の支援判断にも注目しておきたいと思います。ECBは現在、ギリシャの中央銀行がギリシャの民間銀行に資金を供給する「緊急流動性支援(ELA)」を承認しています。今回、ギリシャがIMFへの返済を延滞したことを受け、ECBはELAの承認を継続するのか難しい判断を迫られることになります。ギリシャではすでに資本規制が導入されていますが、第2次金融支援の失効に加え、ELAまで打ち切りになると、経済の破たんは時間の問題となります。そのためELAについては政治的な配慮がなされる可能性が高いとみています。

 ギリシャ問題については、これまでのように予期せぬ事態が起こることは十分考えられますので、国民投票前の数日間であっても警戒を持って見守る必要があります。なお国民投票の結果が「受け入れ賛成」となり、交渉が再開されて新たな支援策の合意に至ったとしても、ギリシャ問題が完全に解決した訳ではありません。その先、財政改革が合意通りに進まなければ、再び支援の見直しという状況に陥ることも考えられますので、ギリシャ問題は金融市場にとって長期的な懸念材料とみておいた方が良いと思われます。

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 (2015年7月1日)

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