トランプ米大統領はパウエルFRB議長を解任できるのか

2025/04/22

トランプ米大統領はパウエルFRB議長を解任できるのか

        • トランプ大統領のパウエルFRB議長への批判が続き、4月21日の米国市場は「米国売り」が再燃。
        • 法律上、大統領が議長を解任する正当な理由の定義はないが、過去の判例が独立性の基盤に。
        • 現在行われている最高裁での訴訟の行方に注目、結果次第ではFRBの独立性に影響することも。

トランプ大統領のパウエルFRB議長への批判が続き、4月21日の米国市場は「米国売り」が再燃

トランプ米大統領のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対する批判が続いています。トランプ氏は4月21日、SNSへの投稿でパウエル氏を「判断が遅すぎる男」、「大きな敗者」とし、「今すぐ政策金利を引き下げない限り、経済は減速するかもしれない」と利下げを要求しました。なお、トランプ氏は先週17日にもパウエル氏を「一刻も早く解任すべきだ」とSNSに投稿しています。

大統領からFRB議長への利下げ圧力が続くなか(図表1)、4月21日の米国市場では、FRBの独立性が損なわれるとの強い警戒が広がりました。この日は、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数がそろって2%超下落し、安全資産とされる米国債も長期債を中心に軒並み下落(利回りは上昇)、米ドルは対主要通貨でほぼ全面安となるなど、再び「米国売り」の様相が強まりました。

法律上、大統領が議長を解任する正当な理由の定義はないが、過去の判例が独立性の基盤に

前述の通り、トランプ氏がパウエル氏を解任すべきと投稿したことで、市場では大統領がFRB議長を解任できるのかという疑問の声があがっており、本稿ではそれについて検証します。まず、米連邦準備制度法(Federal Reserve Act)をみると、議長を含むFRBの理事は、「正当な理由(for cause)」によって大統領に解任されなければ、前任者の任期満了から14年間の任期を務めると定めています。

歴史的に、正当な理由としては、「不正行為」や「能力の欠如」が該当し、「金融政策についての意見の相違」は該当しないと解釈されてきましたが、米連邦準備制度法には、正当な理由についての明確な定義はありません。ただ、大統領には理由なく独立機関の高官を解任する権限はないとした1935年の米連邦最高裁判所の判例があり、FRBの独立性は長きにわたり、この判例が基盤となってきました。

現在行われている最高裁での訴訟の行方に注目、結果次第ではFRBの独立性に影響することも

なお、現在、米連邦最高裁判所では、トランプ氏が2つの独立機関(全米労働関係委員会とメリットシステム保護委員会)の高官を解任した件で、訴訟が行われています。解任された高官は復職を求めており、前述の1935年の判例に違反しているか否かが争点となっています。そのため、この訴訟の結果次第では、FRBの独立性が揺らぐ事態にもなりかねず、当面は注視していく必要があると思われます。

トランプ氏がパウエル氏を解任できるかについて、ポイントをまとめると図表2の通りになります。米相互関税の発動によって市場の不安が高まっているなか、大統領がFRBに利下げ圧力をかけ続ければ、市場はさらに強く米国売りで反応する恐れがあります。現時点で市場を安定させるには、各国政府が米国との貿易交渉を進め、FRBが圧力に屈せず政策を運営していくことが期待されます。

 

 

 

 

(2025年4月22日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ